世間ではよく 「初降下の前日には遺書を書かされる」 などと言われておりますが、実際には書く奴もいれば書かない奴もいて適当でした。
自分はと言うと、 「どうせ戦争になりゃそんなもん書く暇も無く出動せにゃならんのだろ?」 と言いながら、面倒なので書きませんでしたが。
ただ何故か、認識票のコピーを1枚作り、空挺靴の中に挟んでいたのは事実です。
・・・ってそりゃ戦場行く時だろが(‘‘‘)。

(搭乗前、これは別の演習の時の写真。)
初降下日の朝はメチャクチャ早いです、大体0500(午前5時)には集合しています。
飛行場が近くの下総(千葉)なら良いのですが、入間(東京)からの発進だと0300頃起床、0400には出発しています。
気象がどう転ぶか解らない為、1週間の期間をとっていても時間は無駄に出来ません。
かつて強風の為、更に丸1週間も伸びた期もあったそうです。
降下日は出発から帰隊まですべての指揮権がJMに委ねられ、たとえそれが3曹でも幹部はそれに従わなければなりません。
初めての降下は人それぞれ、自分は前期からの同期とこんな会話をしておりました。
自分 「おいどうする、緊張してきたぜ。」
同期 「お前なんかまだいいよ、オレなんか初めて乗る飛行機から飛び降りるんだぜ。」
自分 「・・・。」
皆緊張はしていますが、こんな感じです(笑)。
飛行場に着いたらすぐに体操、傘受領、点検・調節まで済ませ、機体の準備が整うまで待機となり、この時間を利用して再度機内・飛び出し
動作、操舵、着地と練習を繰り返します。
向こうの準備が終わったのを見計らって傘を装着、搭乗員が来たのと同じ頃で我々も搭乗を開始します。
ただし、我々は後ろのカーゴハッチから。

(がま口から搭乗。)
乗ってから大体20分ほどで離陸となります、旅客機と違い小さいので離着陸、上昇・下降の衝撃はハッキリと感じます。
風と航空管制によって異なりますが、20〜60分程でDZ(着地予定地点)上空に、6分前で 「降下用意、立て!」 の号令が掛かります。
自分等は途中下車なので、立ちあがると折り畳みの椅子を上げ通路を確保、自動索を何時でも上のワイヤーに掛けれる様自動的に準備しま
す。
「環を掛け!」
頭上のワイヤーに環を掛け、外れないように掛け金にピンを指しこみます。
「自動索環、安全ピンよし!」
「装具点検!」
定められた順序に基づき、 「イチ、二、サン・・・!」 自動索、肩部離脱機、胸帯・・・とチェックをしていきます。
自分が終わると、今度は前の隊員の後ろを点検し、異常がなければ最後に「シチ(7)!」の号令で相手の尻を叩きます。
降下長は全員の動作を見計らい、 「報告!」 の号令を出します。
先の点検の最後のように、後ろから前の人間の尻を叩いてゆき、先頭が合図を受けたら 「準備よし!」 を報告します。
大体ここまでで普通は3分程で出来るのですが、銃や背嚢を装着していると、機内は動く隙間も無いので点検が困難になります。
そんな時はとにかく気付いた者が片っ端から点検し、強引に帳尻を合わせていました。
そんなコンナで気が付けばもう降下2分前、そして降下へと流れ込む訳です。

(着地!。)
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