さて・・・
ちょっとオーバーでしたがいかがだったでしょう?
まあ、大げさのようですが事実あんな感じです、ハイ。
因みに何故に3回目を書いたかと言うと・・・
初降下の状況なんて書いてたらページが足りなくなるからです。
一番あっさりと終わってくれたのが3回目だったので(笑)。

(スキャナでそのまま入れたんで影が・・・。)
空挺記章を着けるには、まず習志野で「基本降下課程」の教育が必要となります。
自衛隊の場合、5週間の訓練期間を取ってあり、4週間で地上準備訓練、残りの1週間で実降下となります。
これは何も空挺部隊に配属された者の特権では無く、他部隊の隊員も希望を出せば参加する事が出来ます。
また、航空のレスキュー要員も技術習得の為に入校したりします。
彼等(レスキュー)の殆どはすぐにレンジャー教育に入校するのですが、ダミー(50kgほどの人形)を担いで歩くその体力の凄まじさには皆驚かされていました。
入校式が終わるとまず簡単に落下傘の説明があります。
自分が居た時は60式という古いタイプでしたが、今はおフランスの”古い(爆)”モデルに変更されています。
作りは簡単で傘部を潰すとほぼ一直線になり、そのまま蛇腹に収めていくだけです。
格納がそんなものですから、開傘も逆順で終わってしまいます。
飛ぶ際には傘の先端に自動索という縛帯が着き、これを機内に引っ掛けて飛び出すと傘が出て行き、一定の過重で離れる様になっています。
それが終わると基本中の基本、着地訓練が始まります。
自衛隊、軍隊の着地方法はスカイダイビングと異なり、ほぼ垂直に降りてくるのでまともには着地出来ません。
その為「5接転回着地(パラシュート・ランディングフォール)」という方法がとられます。
前項でも書きましたが、身体全体をわざと斜めに倒し、衝撃を分散、緩和するやり方です。
始めは膝を膝を突いた状態から、立ってその場ジャンプ、30cm程の台、1m、1.5m(だったと思う・・・)という具合に徐々に高台
からの実施となります。
この際足はしっかりと閉じていないと、衝撃が間接に掛かってしまい骨折の原因となります。
自分はこの個癖がなかなか治らず、膝に帽子を挟んで落とさないようにしたりと、常に最後まで訓練に残されていました(‘‘‘)。
最初の一週間はほぼ着地に費やされますが、二週目になると一気に機内・飛び出しや傘の装着、操縦といった動作が加わってきます。
いずれの訓練も地上に模擬装置があり、実際の降下と同じ要領での訓練が実施されていきます。
特に飛び出し動作はモックアップだけでなく「飛び出し塔」なる塔を使用するのですが、こちらは有難い事に人間が怖いと思う高さ(約11m)に合わせて
造られています。
飛び出した隊員は、上に沿わされているワイヤーで離れの台に送られていく仕組みです。
最初は一人ずつ、次に連続、最後は武装した状態でと段階を踏んでいくのですが、中には突如飛び出せなくなる者もいて大変でした(大体そういう隊員
も最後には飛び出せる様になりますが)。
また、ヘリコプターからの飛び出しもこの際に実施します。
尤もヘリ(UH-1、CH-47)のモックアップは無く、木枠で作ったオリジナル模擬しかありませんでしたが。
無論それらは、実際の降下はぶっつけ本番となります。
操縦訓練に関しても、同じように模擬の縛帯を吊るした施設があります。
と言ってもこれもそんな大した物ではなく、古くなった傘から外した縛帯をパイプに吊るしただけという質素なもの。
ぶら下がると体重&装備の重量が直にかかるので、一回やるごとに腕がパンパンになっていました。
軍用傘の操舵は難しくなく、向きたい、行きたい方向のライザー(上から傘→張索→ライザー→縛帯となっている)を懸垂の要領で引っ張るだけ。
一本で方向転換、二本でその方向に進んで行きます。
ただ実際には細かい操舵が出来ない為、ぶつかりそうな時はお互い 「バカヤロー、どけー!」 なんて怒鳴りながら降りて行くのが常でした。
落下傘の点検、装着も繰り返し行われます。
まずは主・予備傘共に経歴簿が着いており、畳んで2ヶ月以上の物、結合部に封印が着いていない物は交換してもらいます。
各縫合部、結合部に異常が無いか細かくチェックし、装着に入ります。
60式はまず背負い、股下から伸ばした縛帯を体側のそれに通し、胸部連結環で合体させます。
すべての縛帯が繋がっている為、締め上げると全身が窮屈になります。
衝撃のダメージを吸収させる為なので仕方ありませんが、こんな状態で、しかも武装しようものなら降りるまでは殆どペンギン状態になります。
さて、技術面が整っても肝心な人間が着いて行けなければ話にもなりません。
各人の体力を向上させる為、第一週から「体力向上運動」なる体力練成が行われます。
これは屈み跳躍や体前屈といった動作を1日間隔で計7回、それぞれの運動が8〜16回に上がっていって行われます。
一見何も変哲の無い運動に思われがちですが、それぞれの動作に対し、絶対と言っていいほど「反省」が着いて来ます。
様はいちゃもん着けて腕立て伏せや屈み跳躍を追加させるもので、ヒドイ奴は1回の動作に対し100回位腕足せ伏せをやらされていました。
ともあれこれを最後まで出来れば、自動的に最終の体力検定には合格できるようになるものです。
こんな具合で様々な訓練が重なって行き、4週目には傘が開いた状態での模擬降下の出来る「降下塔」が実施されます。
習志野駐屯地のシンボルマークでもあるこの塔は、高さ約80m、天辺に4本の腕が東西南北と伸びており、それぞれの先端にワイヤークレーンが通っています。
訓練の際はこれに大きなリングを付け、傘を開いた状態で装着、最上部へ引き上げると放されて開傘した状態で降りれる仕組みになっています。
航空や海上のパイロットは2週間でここまで実施して終了となります。
何よりも驚くのはその見晴らしの良さで、3回実施された降下を全部南側でやった自分は、毎回幕張を眺めておりました。
ただ風が強くなったりすると止むまで宙ぶらりんにされたりするので、必ずしも良いとは言えませんでしたが。
余談ですが、夏祭りなどのイルミネーションなどは隊員が直に登って着けるのですが、足場は鉄とはいえ網状のプレート、当然下は丸見え、そんな場所で命綱一本で作業する為、
仲間はよく 「誰が造ったー、設計者呼んでこーい!」 などと怒鳴っておりました。
また、運悪く降下中に塔に絡まってしまった者は、如何なる状況でもその場で 「ミ−ン、ミ−ン!」 と”蝉”をやらなければならず、意地悪に 「おお、もうそんな時期か。」
などど言われ、隊では風物詩となっておりました。
この”蝉”、季節を問わず年に1回は拝む事が出来ます。
こんな感じで造られた隊員は、いよいよ初降下へと送られていく訳です。

(初降下・・・の前の日、この日は雨で飛べませんでした‘‘‘。)
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