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第2章 中世 ◆グレゴリオ聖歌 ◆世俗音楽 ◆多声音楽への動き ◆14世紀のフランス、イタリア、イギリス 第2章 中世 中世 4世紀ごろから 象徴的な出来事 ゲルマン民族の大移動(375開始) 古代ローマ キリスト教の誕生 典礼音楽 ユダヤ教の影響 音楽を重視する姿勢、無伴奏の曲のみを用いる習慣、礼拝の形式 古代ギリシアの数理論、象徴論、エートス論 <音楽を学問の対象とみなす考え方> ボエティウス 音楽の分類 ムシカ・ムンダーナ(宇宙の音楽、天体の運行における調和) ムシカ・フマーナ(人間の音楽、魂と肉体の調和) ムシカ・インストゥルメンタリス(道具あるいは器官の音楽、器楽と声楽)ムシカ・ムンダーナとムシカ・フマーナの模像 中世の大学(12世紀) 自由学科のなかの4学科(幾何、算術、天文学、音楽) 音楽そのものが明らかに(9世紀ころ) 西洋音楽 教会音楽 グレゴリオ聖歌(12世紀ころ) ロマネスク様式の教会建築と類似 ゴシック様式の教会建築(13世紀)アルス・アンティクア 単旋律音楽から多声音楽へ エスタンピー(13世紀〜14世紀)器楽 舞曲 ◆グレゴリオ聖歌 中世の宗教音楽の代表 ローマ・カトリックの典礼音楽 ラテン語 教会旋法によって律せられた単旋律音楽 順次進行を主体とした穏やかな曲線を描くものが多い 単純な朗唱風の旋律(詩篇唱定式)から音楽的に豊な旋律にいたるまでさまざまなスタイル アカッぺッラ(礼拝堂風に)無伴奏 歌い方 交唱(斉唱と斉唱の交代)、応唱(独唱と斉唱の交代)、直行唱(交代なし) グレゴリオ聖歌(9世紀〜16世紀) ヨーロッパ各地における典礼音楽を集約したもの ユダヤ教の聖歌、東方諸教会の聖歌(ビザンツ聖歌など)、古ローマ聖歌、 ガリア聖歌、ミラノのアンブロジオ聖歌、スペインのモサラベ聖歌など グレゴリウス1世(在位590〜604、6世紀末、ローマ法王) 今日のような形になったのはルネサンス時代になってから <主要なもの> 聖務日課用 毎日決まった時間に決められた順序で歌われる ミサ用 式文 ミサ通常文とミサ固有文が組み合わされて歌われる ミサ通常文(5章)同じ言葉で歌われる 幾通りもの旋律 キリエ、グロリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイ ミサ固有文 典礼の内容によって言葉が変化 旋律も固有のもの 入祭唱、昇階唱、アレルヤ唱、詠唱、奉納唱、聖体拝領唱 <記譜法> ネウマ譜(10世紀ころ) 音の高さ(相対音高) 明確 音符の長さ 不明確 ※現在いくつかのリズム理論が考えられている 音符によって音価に違いがある すべての音符が等しい音価である→ソレム唱法(19世紀〜20世紀フランスのソレムの修道院で研究され体系化されたリズムの理論) 4線のネウマ譜(13世紀ころ) グレゴリオ聖歌の音域がオクターヴにおさまることが多いため 音部記号 ハ音記号とへ音記号 周期的なアクセントはなく 拍子記号も小節線もない 4種類の縦線は楽句の切れ目あるいは音楽的な段落点の性格を示す 教会旋法(11世紀に完成)8種類 正格旋法と変格旋法が一対ずつ組になっている 旋法の種類が数で示される場合 奇数が正格旋法 偶数が変格旋法 終止音 各旋法の中心となる音(旋律の最後になることが多い) 支配音 朗唱音、保読音(テノール)旋律において出現する頻度の多い音 詩編唱 一対の正格旋法と変格旋法では終止音は同じだが支配音は異なる ◆世俗音楽 解読可能な楽譜(11世紀ころから) フランスのジョングルール(旅芸人) ミンストレル(貴族の従者となって住居も定まり社会的にも少し地位が向上した人々) プロヴァンス地方にトルバドゥール登場(12世紀。南フランス) 音楽的にも充実した作品を残す 彼らの多くは特定の城に仕えた騎士 作詞・作曲をしたが公の場での演奏活動はしなかった 作品の多くは恋愛詩 音楽的にはフレーズの区切りが不明確で自由リズムに近いといった特徴 トルヴェールと呼ばれる騎士階級を中心とした人々が活躍(12世紀の中ごろ北フランス) 音楽的な特徴 フレーズ構成が明確 拍節感も意識され 曲調も陽気で軽快 代表者 アダン・ド・ラ・アル『ロバンとマリオンの劇』現存最古の音楽劇 (12世紀末ドイツ)フランスの世俗音楽の影響を受ける ミンネゼンガー 騎士たちを中心とした人々 いかにもドイツ的な地味で重々しい曲 ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ『パレスチナの歌』十字軍との関係 世俗音楽の特徴 単旋律 即興的な伴奏 長調・短調 楽曲形式も次第に固定化 歌詞 フランス語、ドイツ語、ラテン語以外の俗語 十字軍の遠征による騎士階級の没落などが原因となって次第に衰退 マイスタージンガー(14世紀ごろドイツ)商人や職人などの一般市民 ルネサンスにかけて活躍 音楽的には自由リズムによる単旋律音楽 代表者 H. ザックス ヴァグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』 ◆多声音楽への動き ヨーロッパ音楽独自の世界 和音、和声、調性 2つの旋律を意識的に重ねる音楽の登場 ひとつの旋律を2人で歌う 部分的、即興的、装飾的に多声 同じ旋律を大勢の男女で歌う 自然に8度、5度、4度のいずれかの響きになる 理論書『音楽提要』著者不明(9世紀あるいは10世紀なかごろ) 2本の旋律の重ね方 1.グレゴリオ旋律 2.コレを主声部とし、その5度下あるいは4度下に1音対1音の関係で平行に動くもう1本の旋律(オルガヌム声部)が付加 平行オルガヌム(11世紀)オルガヌムの語源は、ギリシア語のオルガノン「道具」 斜進行や反進行の動きを含む1音対多音の自由オルガヌム 南フランスのサン・マルシェル修道院(12世紀) グレゴリオ旋律の上に自由に揺れ動く旋律を重ねる テノール(用語:ラテン語の名詞形)「保持する」グレゴリオ旋律の各音は長くのばされたため さまざまな音程 曲頭と曲尾では同度、4度、5度、8度のいずれかになるのが原則 曲の途中でも上音部と下音部がぶつかるところではこれらの音程が多く用いられた ノートル・ダム大聖堂でつくられたオルガヌム(12世紀後半から13世紀にかけて) 記譜法の変化 音楽そのものが変化したことを証明 リズム面での変化 ノートル・ダム楽派 ぺロティヌス レオニヌス『オルガヌム大集』を改訂 リズムを楽譜上に明記 リズム部により正確な楽譜を残した 6つのリズム型 リズム表記法(モード・リズム)第1〜第6 リガトゥラ 連結符(ネウマを数個つなげたもの) 個々の音の長さは音符の種類によって直接的にではなく音符の連結の仕方によって間接的に示された 3本あるいは4本の旋律が(明確に意識され)重ねられて響きがより豊かに モード・リズムの存在意義が大きくなった ディスカントゥス様式 クラウスラ(ラテン語「終わり」) モテット(フランス語「言葉」) モテット(14世紀) 技法 アイソリズム 音楽的な統一 ◆14世紀のフランス、イタリア、イギリス 新しい記載法(14世紀フランス) ヴィトリの理論書『アルス・ノヴァ(新しい技法)』(1320ころ) 2分割(たとえばひとつのロンガを2つのブレヴィスに分ける方法)のリズム導入 モード・リズム(13世紀フランス)の 3分割(たとえばひとつのロンガを3つのブレヴィスに分ける方法)のリズムを中心とした音楽は アルス・アンティクア(古い技法)の音楽と呼ばれた アルス・ノヴァの代表的な作曲家 マショー 新しさに満ち溢れている彼の主要なジャンル バラード、ロンドー、ヴィルレーなどの世俗歌曲 トルバドゥールやトルヴェールの伝統を引き継ぎ洗練された旋律と豊かな響きが特徴 唯一のミサ曲『ノートル・ダム・ミサ』(1364?)音楽史上きわめて重要な意味を持った作品 マショー以前にはひとりの作曲家がミサ通常文をひとつのまとまった作品として通作するということがなかったから 4声部で書かれている(当時は3声部が一般的) キリエ、サンクトゥス、アニュス・デイ、イテ・ミサ・エストのテノール グレゴリオ聖歌の旋律がリズムで引用 上声部はホケトゥスなどを用いながら細やかな動きをみせる BACK |