対称癖 - Symmetrical peculiarity -

主に分裂病者に見られる時空間の観念の障害の一種で、 全生活を対称によって規定しようとする奇妙な態度。

病的幾何学主義
非合理的な因子をとり除き、ものごとの価値を幾何学的な性質だけによって 合理的・抽象的に評価しようとする態度。分裂病で多く見られる。

現実との生ける接触
ミンコフスキーは”生きられる時間”、”明るい空間”といった言葉で時空間の 検討を行なったが、自閉についても現実を”生きた”接触があるかどうかが重要だ、 と述べた。

対人関係 - Personal Relations -

コンストラクティビズム アメリカの家族療法で用いられる概念。絶対的な現実は存在せず、 各々が現実の解釈を作り上げているだけ、という考え方が基本となる。
ダウン症候群 - Down's syndrome -

1866年に英国のジョン・ラングドン・ダウン医師が発見したことから、この名がついた。1959年、21番染色体が1本多い染色体異常(21トリゾミー)が原因だということがわかり、その後21トリソミー症候群とも呼ばれる。特有の顔貌と知的障害を認め、心臓には先天性心疾患等を合併する。全身の筋肉弛緩、心臓の形態異常、ヘルニア、てんかん、乾燥肌、精神発達遅延などを伴うことが多いが、程度には個人差がある。頻度は、およそ800〜1100人に1人の割合とされており、高齢出産の場合にその出現率が高いといわれている。出生前診断や着床前診断でダウン症の有無を調べることが多い。染色体検査によって診断は確定し、早期から適切な療育を受けることで日常生活能力等を向上させることが可能となっている。心疾患については、小児循環器の専門医の診断、経過観察、場合によっては手術等が必要とされる。
過換気症候群

脳の病気や、運動、発熱などの身体的原因でも起こるが、多くは、不安や恐怖などの心理的原因によって起こる。呼吸をしすぎることによって、酸素をとりすぎ、ひどくなると、手足がしびれ、気を失うこともある。
妥当性 - Validity -

測定を行った時に、その測定が調べたい対象を的確に捉えているかどうかという概念。例え信頼性が高い測定値が得られたとしても、それが目的とする量を的確に表現していなくては妥当性が高いとはいえない。妥当性には次にあげるようないくつかの種類がある。それらは、内容妥当性(content validity)、構成概念妥当性(construct validity)、基準関連妥当性(criterion-related validity)と呼ばれる。
ダブル - Double -

ダブル・バーレル (Doble barreled)
「二重性の」と言う意味であり、調査での調査票や質問紙の質問内容を作成するとき、一つの質問の中に、二つ以上の論点や事柄を含む設問を立てる事を言う。これは、調査対象者が回答するときに、混乱を生じさせやすい。特に、含まれた事柄がよく似ていたり、同種類に属する場合には、回答が不可能になったり、いずれか一方のみに回答がなされたりするので、結果にも影響する。質問文の作成にあたっては、一つの質問文には、一つの内容のみを含むようにしなければならない。

ダブル・バインド (Double-bind)
ベイトソンらが提唱した二重拘束理論のこと。精神分裂病の家族に見られる独特のコミュニケーションのルールで、言葉で話すメッセージと体で示すメッセージが矛盾している。動くとだめ、動かぬことは許されないといった抜き差しならない状況のこと。

チェイニング - Chaining -

もとは鎖でつないでいくという意味。心理学では新しい知識や技術を順次習得して行く際の方法をいう。

順向チェイニング
複合行動を細かくステップ化し、その行動単位を組み合わせて、ひとつひとつ順次習得させて行く

逆向チェイニング
やり方は教示するが、方法はステップ化した行動は本人が自発的に習得する

チック - Chick -

ある限局した一定の筋肉群に、突発的、無目的、不随意に急速な運動が起きるもの。まばたきや、顔をしかめるなど上半身に多く見られ、発声を伴うものもある。男児に多く、幼児期に一過性に出現するものが大部分で、環境のストレスによるものでは、環境調節により症状は軽くなる。
注意欠陥・多動性障害 - Attention-Deficit/Hiperactivity Disorder;ADHD -

年齢に比して不適応な注意力障害、衝動性の高さ、多動を基本的特徴とする行動障害。

注意の障害
課題の持続が低く一つの活動に集中できず転導性が高く気が散りやすいことなど

多動
じっとしていなければならない状況で過度に落ち着きがない状態。

衝動性の高さ
質問が終わる前にだし抜けに答えてしまう、会話やゲームに干渉するなど、考えてから行動することができず、思いついた瞬間に行動してしまうこと。

これらの3つの症状のいくつかが7歳未満に存在し、障害を引き起こしており、またその症状が広汎性発達障害、精神分裂病、またはその他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではないときに、ADHDと診断される。

直面化

クライエントが否認し、目をそむけている心的現実や本当の意味付けを指摘し、現実検討を促す介入のこと。
通信分析 - Respondence Therapy -

面接中に行う補助的方法。葉書、手紙、日記、詩などをカウンセラー宛にクライエントからもらい、これにカウンセラーが感想や意見を付けて返信する治療方法。互いに面識があってイメージが出来ている場合に有効性を発揮することがある。
ディアスポラ - Diaspora -

' 離散 ' を意味するギリシア語。バビロン捕囚後にユダヤ人が異邦人の土地へと離散したという聖書の記述に由来し、本来はイスラエルから他の様々な場所へと移り住んだユダヤ人とその子孫の共同体をさす。しかし「元は同じ場所に住み一つの文化を形成していたがその後は各地へ移住した状態にある」という意味で、ユダヤ人に限らず使われる。また移住した先の場所や移住の経験自体もさす。 新世界の各地に連行されたアフリカ人の子孫は、アフリカン・ディアスポラまたはブラック・ディアスポラと呼ばれる。ディアスポラは移住先の文化を少なからず変質させる。また、パン・アフリカニズムのように離れた場所で一つの思想や運動が展開するのは、離散した人々がそれぞれの移住先にいながらも起源地へのアイデンティティを保つからである。ディアスポラの問題を考えるには、国や地域という枠組みに固執せず、近代世界の構造までも視野に含める必要がある。
TAT/主題統覚検査 - Thematic Apperception Test -

Morgon,C.&Murray,H.によって作成された投影法的心理検査の一種で、刺激図版に対してひとつの物語を被検者に作ってもらい、そこからその人のNeedとPressを理解していくものである。マレー板TATは1935年に制作されたが、その他にCAT(児童用)、ブラッキーテスト、MAPS、などが考案され、日本においても名大版、精研版、などが作られている。
ティプス・メランコリークス

うつ病への親和傾向を持つ性格。几帳面、自分への要求水準が高い、 仕事の虫、律義、まがったことが嫌い。このような人にとっては、 秩序が少しでも崩れる事態は危機として作用する。

・荷下ろしうつ病
 常識的な予想には反して、むしろ、重荷から解放された状況で発病するうつ病。 緊張の平衡が失われることが原因。

・引越しうつ病
 引越しもうつ病の発症を招くことがある。慣れた住居の喪失という観点から 説明されることが多い。

・昇進うつ病
 職務異動もうつ病の誘因となることがあるが、そのうち、 かえってよいポストにかわっても起こるものがあり、この名で呼ばれる。

・テレンバッハ
 ドイツの精神病理学者。原因なく起こるといわれている内因性うつ病に、 下地となる性格傾向や状況依存性があることを研究している。

テイラー不安検査(顕在性不安検査) - Manifest Anxiety Scale;MAS -

 テイラーにより、不安の精神的身体的な徴候が意識にはっきり現れ、ある期間持続するような慢性不安反応の程度を測定するために作製された。

 原法は、ミネソタ多面人格目録(MMPI)から抽出された50項目を虚偽尺度用項目、検査目的をぼかすための項目などを加え総計225項目から成っているが、日本語版では上記50項目に妥当性検証のための15項目(LP度)を加え65項目より構成されている。

適性処遇交互作用 - Aptitude treatment interaction;ATI -

 学習者の特性(適性)と、特定の学習法や教授法(処遇)の間に相互作用がみられ、両者の組み合わせによって学習効果が異なることをさしており、クロンバックが提唱した。これは教授−学習場面における学習者の個人差を重視した考え方。
デジャ・ヴュ

初めて出会うはずの情景を”前に見たことがある”と思う体験。 正常者でも疲労した時に見られる追想の錯誤といわれる。
テクノストレス - Techno stress -

プログラマやシステムエンジニアのようなソフト技術者のようにコンピュータ業務に日常的に長時間従事する労働者に広がっている症状。精神的に不安定となり憂うつ感、不安感、焦燥感が高まり、肉体的にも頭痛・肩こりの症状を呈する。
転 移・逆 転 移 - Transition ・reverse transition -

転移
 クライエント(患者)が親などに持っている欲求、態度、感情を、現在の対象、カウンセラー(治療者)に向け、満足を求めること。信頼・好意などの感情・態度を向ける陽性転移と、不信・敵意などの感情・態度を向ける陰性転移とがある。

逆転移
逆にカウンセラーがクライエントに感情を転移させてしまうこと。

転移神経症(Transference neurosis)
 ・リビドーが自我に集中し、対象者に向かわない自己神経症と対比され、これが転移を生じない分裂病を指すのに対して、転移神経症は治療過程で転移を生じるが故に、精神分析の適応となるヒステリーや強迫神経症など。
 ・分析治療の進展につれ、幼児期の葛藤が治療関係の中に吸収され、治療者との関係によって症状が変化するようになった状態。両親との関係で生じている神経症は起源神経症。

天才和音 - A gifted chord -

ランゲ=アイヒバウムは”無名の天才はいない”として、 天才の誕生には名声が欠かせないと述べ、それが広まることを天才和音と呼んだ。

ランゲ=アイヒバウム
ドイツの精神医学者。『天才問題』、『天才・狂気・名声』を記し、 社会学派の観点から天才論を展開した。

ヤスパース
ドイツの精神病理学者。現象学的、了解心理学的な精神病理学を樹立したが、 芸術・宗教と精神の病の関係を論じる病跡学の研究も行なった。

二人組精神病
妄想などを持つ人と親しくする健康な人が、 その影響を受けて妄想を共有したり発展させたりするという精神病的な伝染現象。

同一性拡散症候群 - Identity diffusion syndrome -

自己同一性を形成する途中で、自意識過剰、社会的な遊びを楽しめない、 などの障害が起きて自分に関してはっきりした定義ができなくなること。

ライフ・サイクル
生物学的に大人になった後期青春期の後も、老年期に至るまで、 発達課題を持った各々の段階がある、というエリクソンの観点。

エリクソン
アメリカの精神分析家・自我心理学者。 彼のアイデンティティー理論は広い分野に影響を与えた。

自己同一性
自己が単一で、連続していて、不変であるという感覚。 これを確立するのが青年期の発達課題といわれる。

動因

 要求の状態を行動エネルギーに変換して特定の行動へ導いてゆくといった行動触発の直接的要因のこと。動機と動因はほとんど同義であるが、動因は生理的要求に起因するものに用いられ,動機は目標との関連で考えた方が理解しやすい場合や二次的要求に基づくものに用いられる傾向がある。類似の言葉に誘因があるが、これは動因によって開始され維持される行動を完了行動へと導く環境内の目標物のこと。
投影性同一視

 自己の良い(good)・悪い(bad)部分のいずれかを外界の対象に投影し、投影された自己の部分と、それを受けた外界の対象とが同一視される原始的防衛機制。
投影法

 あいまいな多義刺激を与えることで起きる反応を組織的にとらえることによって、行動にはあらわれない部分も含めて、被験者の性格を知ろうとする心理検査の一種。
 代表的なものは、視覚的刺激によるロール・シャッハテスト、TAT、言語刺激によるSCTなどであり、描画法、劇によるものもある。
 特色は、刺激の多義性と反応の自由度を含めた意味で検査状況の非構造性にあるといわれている。その結果として人格目録法と異なり、無意識レベルの個性を測定することが可能であること、回答者が意図的に結果を操作しにくいといった利点がある。
 しかし、一度に大勢の被験者を扱うことはできず、試験にも比較的時間がかかる。また、被験者の反応の整理や解釈は、もっぱら検査者の主観によらなければならないので、妥当性は検査者の経験に左右され、それゆえに検査者によって解釈の結果が異なりやすく、信頼性がそれほど高まらないといった限界がある。

洞察

 心理療法過程において、クライエントが自分自身や現実について気付き、理解しなおすこと。
当惑作話 - Embarrassment Confabulation -

記憶障害が高度になると健忘症状が著しくなり、その健忘による当惑を隠す(記憶の障害を補おうとする)ための作り話。この作り話は一種の思い付きであるために、次から次へと変わる。コルサコフ症候群の徴候のひとつに、この作話がある。また、老年痴呆などにも見られる事がわかってきている。
トラウマ ( 心的外傷) - Psychic Trauma -

心的外傷
 その個人のその後の生活や不安対処能力が影響を受けるほど強烈な出来事の経験。戦争、自然災害、大事故、レイプ、重病、殺人事件、死別、いじめの経験などが心的外傷と成り得る。
 それによるストレスが心身に引き起こす障害を心的外傷後ストレス障害、または外傷後ストレス障害という。

 英語でPTSD( post traumatic stress disorders )。
 診断の条件は
1)自ら生死に関わる事件に遭遇したり、他人の瀕死ひんし状態や死を目撃した体験
2)強い無力感や恐怖感を伴う体験―のいずれかのトラウマ体験を持ったことがある場合

 急性は、症状持続期間が3ヶ月未満の場合に用い、それ以上は慢性となる。症状はトラウマ体験を繰り返し思い出し、あたかもその事件がいま起きているかのようにふるまう。また、その記憶から逃れようとするあまり、物事に対する意欲や興味、集中力が著しく減退する。情緒不安定、イライラしやすい、落着きない、びくびくしてる、よく眠れない、という症状が多い。

 治療は、早期に発見して専門家によるカウンセリングなどを受けること。行動療法による脱感作やリラクゼーションは特に効果がある。抗不安薬と抗鬱うつ剤は必要であれば補助的に使用してもよいが、この病気の患者は薬物依存に陥りやすいので、長期にわたる薬物療法は避けるべきである。

トランスセクシュアリズム

自分の生物学的な性を否定し、別の性として生きたいと願うこと。

敏感関係妄想
対人関係に敏感な性格の人が、ある状況において、 何でもない他人の表情や言動をすべて自分に結びつけて考えてしまうという症候。

中核性別同一性
生物学的な雄・雌ではなくて、心理・社会上の男性性・女性性についての 自分の認識。当然、生物学的な性と一致しないこともある。

遁走

人に告げずに居場所を離れ、放浪する。その間のことが追想できないことや新しい自己同一性を装うことも多い。
トントン拍子体験 - Equal rhythm experience -

ものごとが自分の思い通りに運ばれる体験。 躁病に特徴的な場の変化に対して精神科医・吉増克寛氏が名付けた。