解釈 - Interpretation -

明確化、直面化の技法が多くの場合クライエントによって口にし語られた素材あるいは行動化されている材料を使って行なわれている技法であるのに対して、解釈は、本人に気付かれていないが、しばしば盲目的で機械的に反復されている無意識的動機や因果関係について取り上げること。
外発的・内発的動機づけ - Extrinsic Inside Motivation -

動機づけの形態は、大きくわけて外発的動機づけと内発的動機づけに分けられる。

外発的動機づけ
行動へ駆り立てる力が行為者の中になく、行為者の行動に対して他者(親,教師,仲間)から与えられる外的強化(物質的報酬,社会的承認,罰)によって行動が引き起こされる場合。

内発的動機づけ
行動それ自体が面白いからするというように、行動に駆り立てる力が行為者の中にあって他者から外的なコントロールを受けることなく行動が起きる場合。

開放系心理学 - Open System Psychology -

 人間性心理学は人間の生きる意味を深めることを重視するが、治療者の患者への援助関係では具体的目標は明確ではなく、また結果を前もって予想することもない。そこでは発見思考、ないしは過程思考が問われるだけである。A.W,Combsはそれを開放系心理学の特徴としている。
解離

意識、記憶、同一性、知覚といった通常は一貫性をもって体験されているものが統合性を失い、まとまりがなくなった状態でストレスフルな情報を想起できなくなったり、現実感覚がなくなったり、同一性に混乱が生じたりする。
拡散的思考・収束的思考 - Divergent・Convergence Thinking -

拡散的思考
もともと正解は存在せず少数のあるいはあいまいな情報しか与えられていない場面で、どれだけ多くの方向に向けて新しい情報を探索し、生産できるか。様々な可能性について多くの答えを出し、その中からよい解答を探す過程。

収束的思考
特定の正情報を見出すのに必要な諸情報が与えられていて、それらを論理的に正しくつなぎ合わせることによって正情報を見出す過程。

学習障害 - Learning disabilities:略称LD -

1960年代に米国で生まれた概念で、カークにより提唱された。意味は、知能水準は正常範囲で感覚器官や運動能力にも異常がなく情緒的・環境的にも問題ないが、知的には部分的な発達の偏りがあり社会性の低さなどによる様々な不適応を起こしがちで読む・書く・計算するなどの学習する能力の習得と使用に著しい困難を伴う様々な障害の総称。行動特徴は,1)多動や注意集中力の低さ、2)協応運動のまずさ、3)外界の刺激を知覚し認知する力の偏り、4)情緒不安定さや衝動性、5)言葉の遅れ。
学習性無力感 - Learned helplessness -

セリグマンによって提唱された概念。避けることのできない不快な体験や解決不可能事態を経験すると、後に解決可能な場面に出くわしても積極的な活動が見られず、自らが無力であり、環境をコントロールできないということを学習する。このような事態を学習性無力感状態という。自律神経機能ほかの心身機能に影響が見られるほか、抑鬱反応をもたらすといわれている。
隔離 - Isolation -

フロイトが用いはじめた心的機制。「分離」「切り離し」ともいう。 本来は,一定の関連や脈絡があるはずの観念と観念、意識内容と意識内容、行為と行為などの間の関連性を断ち切る無意識的・前意識的機制。 防衛機制として無意識的に働く隔離は、強迫神経症にしばしば現れ、観念と感情の関連性を断ち、その関連性を意識することによって生じる不安・罪悪感などの情緒体験を回避しようとする。
カタルシス - Cathaasis -

1) 抑制された考えや感情、内的葛藤を表出して発散すること。ストレスフルな経験や心的外傷に伴う考えや感情を長期間抑制することは心身の健康に有害な効果をもたらす。
 ブロイヤーとフロイトは神経症の症状を改善するために意識の流れるままに考えや感情を語るよう促すカタルシス技法を利用した。
 しかし後にフロイト自身も認めたように,抑制された感情を単に吐き出すだけでは永続的な症状の改善はもたらされない。むしろ抑制された考えや感情,葛藤を意識化し,言語化する作業を通じて洞察を深めることで問題を根本的に克服することができる。

2) 過去の悲痛な屈辱的な体験,恐怖や罪悪感に満ちた体験など、意識に浮かべるだけでも不快や不安が起こり、心の平衡が失われそうな耐えがたい心的外傷体験や無意識にうっ積している感情や葛藤などを自由に表現させることにより心の緊張を解く方法。

仮面うつ病 - Masked Depression -

憂鬱感などの精神的な変調が目立たず、不眠、全身の倦怠感、食欲低下など身体症状のほうが強く出るうつ病の一般な呼び名。
観察学習 - Observation Study -

自ら直接に経験したり、外部から強化を受けなくとも、他者(モデル)の行動を観察するだけでその行動型を習得する学習。バンデューラが社会的学習理論を提唱する上で中心においた学習。モデルを観察することによってある反応を習得することからモデリングと呼ばれている。

過程
1)注意学習:モデルへ注意を向ける
2)保持過程:観察したものを記憶しておく
3)産出過程:記憶されたものを実際に自分の行動として再生する
4)動機づけ過程:行動を遂行するかどうか決定する。

環境閾値説 - theory of environmental threshold -

遺伝と環境が発達に及ぼす影響について、環境が1つの閾値要因として働くとしてジュンセンが提唱した説。
観察法 - The observing method -

心理現象をありのままに観察して把握する方法。自然的観察法と実験的観察法がある。

自然的観察法
人為的条件を加えず、現象を質的、量的に捉える方法。

実験的観察法
ある特定条件を導入したり統制することによって組織的な観察を行なう方法。

観察の記録は、行動描写法、チェックリスト法、評定尺度法などがあり、最近ではテープレコーダーやビデオレコーダーを用いることが多い。

間主観性 - Lntersubjectivity -

 現象学の用語。心理学では相互主観性と呼ぶことが多いが、両者は完全に内容を異にする。後者は個々人の認識の結果の一致度の高さをいうにすぎないが、前者では事象そのものへの接近のための還元により、自己が他者の身体を媒介として共有された世界を実現する客観性の基礎とされる。
関与しながらの観察 - participant observation -

精神医学を対人関係論から捉えたサリヴァンが心理学や社会学でも用いられる本用語を臨床に導入したもの。「相互に影響を及ぼし合う過程での観察」を意味する。精神科医が患者を診察する場合、人間的かかわり合いの介在を無視した観察は成立しえないことを強調した。
危機介入 - Crisis Intervention -

危機状態にある人に対して、その問題発生状況の的確な理解に基づいた集中的で具体的な働きかけの行なうことにより、崩れたバランス状態を元の状態、より良い状態に回復させるための心理的援助のこと。
儀式行動 - Ritual -

特定の状況で一貫して反復される常同行動。強迫性障害、自閉性障害、精神分裂病などで認められるがそれぞれの性質は異なる。

強迫性障害 … 清潔,確認,整理整頓など、危険性への不安を回避する意図の学習性の行動が多い

自閉症障害や分裂病 … その意図が理解困難か、当人独自の理由を持つ場合がある。

脳の刺激統合機能の不全,及びそれに対処するための二次的症状と考えられる。

季節性うつ病

 ローゼンタールによって提唱された概念で、日照時間が少なくなる秋から冬に限ってうつ状態になり、春から夏になると自然に軽快するうつ病のこと。

 症状 … 抑鬱状態に陥って焦燥感、不安感、不快感などに襲われるとともに、根気や活動性が低下し、体の不調を訴える。

 特徴 … 日中から夕方にかけて強い眠気に襲われたり眠りすぎて睡眠過剰になったりする「過眠」の状態、糖質を過剰に摂取したりする「過食」の症状も見られる。

キブツ - Kibbutz -

 私有制を廃止して独自なコミューン作りを目指すイスラエルの農業共同体。賃金労働の廃止や男女平等、直接民主主義などさまざまな政治的な実験を試みているが、心理学の文脈ではその集団保育・教育システムに注目することが多い。キブツ内では家族の形態は保ちながらも、乳幼児はコミュニティが育成する社会的な養育の制度確立しており、親子関係に限られない多様な社会的ネットワークの中で子どもを育てるシステムの先駆的実践例となっている。
逆制止 - Reciprocal Inhibition -

互いに拮抗する反応の一方を強めることによって他方の反応を抑制させること。

ウォルピは恐怖反応が形成された猫は食餌行動が著しく低下することに気付き、逆に食餌行動が恐怖反応を抑制するのではないかと考えた。その結果、十分に食餌行動を獲得した猫は脅威刺激に対する恐怖反応が抑制されることを発見した。

逆制止は、この実験を理論的な背景としており、系統的脱感作法という治療技法として体系化されている。不安や恐怖の消去に用いられる拮抗反応には、筋弛緩反応が一般的に用いられているが、運動反応、主張反応、摂食反応なども用いることができる。

逆備給 - Counter cathexis -

 S.Freudは心的エネルギーをリビドーと呼び、その増加、減少、放出、置き換えなどの性質をもつものと考えたが、そのリビドーの備給は人物や物事に対して情緒的に特別な関心や注意を向けることをいう。逆備給は外的な人物や物事に刺激されて、例えば、自己愛のように自分の内面に関心を向け、外的な世界への関心が薄れる状態をいう。
ギャングエイジ - Gang Age -

小学校の中学年から高学年頃にかけて,子どもたちは急速に仲間意識が発達し,多くは同年齢の児童と閉鎖的な小集団を作って,そこで遊びや活動をすることを喜びとするようになる。この仲間は,家族以上に大きな影響を持つものであって,大人から干渉されない自分たちだけの集団であることを望んでいる。このような時期を徒党時代・ギャングエイジと呼ぶ。
強迫 - Coercion -

強迫観念
湧き出してくるのを抑えられず,心を占めてしまうある種の考え。わかっていてもそのことが頭から離れない。

強迫行為
どうしても繰り返して行ってしまう事がら。戸締まりの確認など。

強迫性障害

鏡映的自己 - Looking Glass Self -

 反映的自己(reflected self)ともいう。周囲の人々を鏡として、その人達の自分に達する評価的な言葉づかいや態度を反映して形成される自己像。
鏡転移 - Mirror transference -

 分析療法の過程で、分析者が鏡のような物的な対象にされて、被分析者の自己愛の投影を引き受けること。自己心理学の創始者であるコフートが、自己愛人格障害に特異な転移として提唱して以来、境界例などの精神療法においても注目されるようになった。コフートによると、幼児期に十分な映し返しを受けなかった誇大自己が転移されている。
境界例 - The example of a boundary -

診断の困難な精神症状群に対して生まれた概念だが、現在では自己同一性の障害を特徴とする人格障害を指すことが多く、現代社会特有の病理と注目されている。

イマジナリー・コンパニオン
主に子供の空想に仲間として出現する人、妖精、動物など。 『電影少女』みたいだが、概ね肯定的なものとしてその役割が評価されている。

脱錯覚
移行対象(ウィニコット)を介して、それが完全に自分のものだ、というような錯覚から脱して現実に目覚めること。

恐怖症

ふつうは恐ろしくないものに対し、場違いな恐れを感じるのを止められないこと。 広場、対人、不潔、動物、乗物,発狂などの恐怖症がよく知られている。
拒食症・過食症 - Anorexia・Bulimia -

拒食症
ダイエットは魔法の切り札と信じて過度に食事をとらなくなり、 極端に体重が減少。家族から孤立し同時に依存している人たちといわれる。

過食症
拒食に引き続いて起こるドカ喰い。浄化(嘔吐、下痢)を伴うことが多い。

ボディ・イメージ
自己の身体に関するイメージは様々な疾患で歪むが、拒食や過食など摂食障害では、やせていても ' 自分は太り過ぎ ' と思っている。

求心性ニューロン - Afferent Neuron -

神経インパルスを反射中枢へ伝える
空想虚言症

デルブリュックにより命名された。受け入れられない現実があったとき、記憶や自分の感情を意識から 追い出し、架空の作り話を真実と思い込む逃避・防御の方法のひとつ。虚言が虚言を生み周囲を巻き込んでしまうケースもある。架空の人物、架空の出来事。本人が意識的にやめない限りエスカレートする傾向にある。そして、この逃避方法もやがて無理が来て現実と直面しなければいけない日がやってくる。
クレランボー症候群

熱情妄想。ド・クレランボーが詳細な報告を行ったのでこの名でもよばれる。 相手から愛されるというエロトマニー,復権妄想,嫉妬妄想に分けられる。

ド・クレランボー
フランスの精神医学者。ラカンが師と呼ぶ。症状が人格に規定されるのは 2次的な段階においてのみ,という独特の精神自動症の考察で知られる。

クラッシュ症候群 - Crash Syndrome -

交通事故や地震災害などで、救出や搬送が遅れたため、救出後に急性腎不全や心不全を起こす全身障害をいう。「挫滅症候群」ともいう。初期症状のうち尿が茶色に変わり量も減少するのが特徴。傷ついたり圧迫されたりした筋肉から出るたん白質「ミオグロビン」やカリウムなどが、急激に全身に広がり、腎臓や心臓の機能を悪化させるものとみられている。外傷や意識の有無には関係ない。
 阪神大震災の際に注目されたもので、救出から治療を始めるまでの時間が、患者の明暗を左右するとされている。早期発見、早期治療という災害医療の原則が、これほど当てはまる障害はないので、日本救急医療学会などでは、実態調査を行いその対策に乗り出した。

クレスピ効果 - Crespi effect -

報酬の量の急変によって行動が変化する現象であり、1940年代にCrespiによって見出された。彼の実験では、ネズミに与える報酬(食物)が操作され、それまでに与えられていた食物の量を減少させられた群は、一定量を与えられている群に比較して食物への走行速度が急激に低下した。この結果は、動機づけ過程において外的刺激の機能を重視する誘因動機づけの理論を展開する上で貴重なデータとなった。
クレペリン・テスト - Kraepelin Test -

精神作業能力を検出するための検査。今日行われているものは、クレペリンが行った精神病者の作業曲線の研究に基づいて、内田勇三郎が一般的精神検査に発展させたもので、 内田=クレペリン検査という。被検者に数字の計算という精神的な作業を行わせて注意力、集中力、作業への順応性、疲労性を検査する。正常者は初めに作業量が上がり、次第に落ちてくるが、休憩後再び作業量が増加する。
クワシオルコル - Kwashiorkor -

孤児病、乳児消耗病、タンパク栄養失調症などと呼ばれる病気。粉ミルクが高価なために、赤ん坊に薄めて与えると、タンパク質が少なくなり、そのため全身のむくみ、毛髪の変色、下痢、発育障害、それに精神的には無感情が現れる。てい開発国では深刻な問題となっている。ちなみに、クワシオルコルとは西アフリカ(ガーナ)の言葉で見捨てられた子を意味する。肉体的に回復しても、学業不信、人格の歪みが見られる。
幻覚 - Hallucination -

実際には対象がないのに知覚が出現してくる体験。みえる、きこえる、におう、 ふれる、味がする、など。

情動錯覚
対象はあるが知覚の仕方が誤っているという錯覚のうちでも、不安や恐怖などの感情と関係するもの。

形相 - Eidos -

フッサールが、ドイツ語のWesen(本質)とともに、イデー(理念)と同義で採用したギリシア哲学的概念。『イデーン』や『経験と判断』などで使用されるが、中・後期の思索における使用頻度はWesenの方がはるかに高い。ギリシア語の「イデオン」から派生したエイドスは、イデアチオンの方法と相関的であり、それによって対象的に把握される。フッサールによれば、個物は形相を有しており、それゆえに、イデアチオンという一連の注意を要する操作を通じてそれを直感的に取り出すことができる。その際に、事象内容を含む質料的形相は「類的普遍性」を通じて得られる最上位のそれと、「種的特殊性」を通じて得られる。「形相的単独態」という最下位のそれに分類される。さらに、質料的形相は、「端的な直感と抽象的本質把握」に依拠する「類型的形相」と、精密な概念構成にもとづくイデアチオンに依拠する「理念的形相」に分類される。「形式化」の操作によって質料的なものが除外されれば「形式的形相」が得られる。このようにして獲得された諸々の形相に対応して、現象学や幾何学を含む多様な「形相的学問」が成立する。
ゲシュタルトの祈り - Gestalt Prayer -

私は私のことをする。あなたもあなたのことをする。私は私。あなたはあなた。私はあなたの期待に応えるためにこの世に在るのではない。あなたも私の期待に応えるためにこの世に在るのではない。でも、もし偶然に、お互いに出会うことができたら、それはすばらしい。しかし、そうならなくても、仕方がない。
言語発達遅滞 - Retardation Language Development -

それぞれの年齢で期待される水準まで子どもの話しことばと言語が発達しておらず、コミュニケーションに支障をきたしている状態。これには、ことばがまったくしゃべれない、ことばの数が少ない、文の組み立てがしっかりしていない、会話ができない、という問題がある。これらの症状は、音声言語を例に取れば、聴覚受容器→言語音知覚→言語の高次操作機能→表出プログラミング→発声高音器官のいずれかあるいは複数の過程の障害によって生じる。正常な話しことばと言語の発達には、中枢神経系の統合、適切な知的機能、諸感覚経路の正常な働き、順調な情緒の発達、環境からの豊かな言語刺激、そして身体の成熟などの基盤が必要である。したがって、その異常がこの過程の発達を一時的あるいは恒常的に遅らせることになる。

言語発達遅滞は臨床的に
1) 精神遅滞に伴うもの
2) 自閉症に伴うもの
3) 脳性麻痺に伴うもの
4) 聴力障害に伴うもの
5) 高次神経機能障害によるもの(特異的言語発達遅滞症候群を含む)
6) 身体発育不善によるもの
7) 不良な言語環境によるもの
の7つに区分される。

見当識 - Orientation -

現在、自己および自己が生活している状況を、周囲の客観的状況と個人的体験に結び付けてとらえていること。指南力とも言う。
具体的には現在の時間(zeitlich)、場所(ortlich)、自己の身元存在(autopsychisch)(生年月日、年齢、家族関係、職業、自己の役割、特徴など)、外界の状況(situativ)が正しくとらえられていること。見当識が障害されていることを失見当(識)という。

抑うつポジション - Depression position -

乳児は最初、対象を良いと悪いの側面に分けてとらえるが,それらが統合されると, この抑うつ的な絶望状態の態勢に至るといわれる。これから身を守る方法として 現れるのが躁的防衛。

クライン
主にイギリスで活躍した女性精神分析家。1歳未満の子どもの無意識の幻想に ついて,母親という対象との関係から考察し,対象関係理論を発展させた。

効果の法則 - Law Of Effect -

学習の原理としてソーンダイクが提唱した説。ある場面で行なわれた反応が満足をもたらすならば、その反応と場面は結びつき、その後その反応の生起可能性が高まり、また不満足をもたらすなら、結びつきは弱まって、反応の生起可能性は低下するというもの。

この法則は新行動主義の学習理論に受け継がれ、ハルの強化説を生んだ。

高原現象 - Plateau -

学習過程で、練習を続けているにもかかわらず時に進歩の見られない時期がある。この学習の足踏み状態を高原現象(プラト−)という。学習方法の工夫、動機付けの喚起、気分転換などにより克服可能であり、一端克服されると学習はさらに高い段階に進む。
構成主義心理学

 ヴントによって始められた心理学。心理学の対象を意識であると考え、自分自身の意識過程を観察する内観法を強調し、複雑な意識過程も単純な心的要素に分析された後、再結合させることにより、その心的結合の法則を探ることができると考えた。その後、ヴントの学説に反対する考えが次々と生まれ、現代心理学の諸学派が誕生した。ゲシュタルト心理学と行動主義はその中のものである。

 ゲシュタルト心理学
 構成主義の要素主義、連合主義の考え方に反対し、全体は単なる部分の寄せ集めではなく、まず全体があって部分はその全体に依存して現れると主張した。この全体性をゲシュタルト(形態)と呼び、要素に還元できない、まとまりのある1つの全体がもつ構造特性を意味している。

行動主義
 科学的心理学とは行動の科学であり、その研究対象は客観的測定の不可能な意識ではなく直接観察可能な行動であり、その目的は刺激=反応関係における法則性の解明であるという立場を取るものである。ワトソンは内観法による意識心理学に対抗し、心理学は客観的な行動を対象とするべきであると提唱した。

行動化 - Acting Out -

・精神分析学の概念の一つ。治療場面あるいはその他の場面で患者が言語による表現の代わりに、行動によって自己表現を行なう現象。行動化は主として転移との関係で生じ、自我親和的で一定の目的をもった行動で、単なる症状的行為ではなく葛藤や緊張を無意識的に行動によって解放し、内省や洞察に達する努力の一種とみなされている。しかし、その中に含まれる自我成長への可能性や治療者との交流の手段としての意義を評価し治療に役立つものとして理解するものもある。

 ・無意識の衝動や葛藤を言葉で報告する代わりに行動を通して表現することでフロイトが精神分析治療の文脈の中でこの用語を用いた。

行動主義・行動療法 - Behaviorism・Behavior Therapy -

古典的条件づけ、オペラント条件づけ、モデリングなどの種類がある。

行動主義
人間の意識よりも客観的に観察可能な行動に焦点を当て、行動の予測と制御を目指している。

行動療法
神経症などは学習された行動又は学習の欠陥としてとらえ、その修正・除去を目指す。

行動主義理論 - Behavioristic Theories -

1910年代にワトソンにより主唱された行動主義を基本的立場とする理論のこと。科学的心理学の発展に多大の影響を及ぼした。ワトソンは意識内容の分析を中心とする内省的・観念論的(意識主義)心理学に強く反対し、心理学は客観的記述が可能な活動(行動:behavior)を研究対象とするべきであると主張した。彼は理論的にも方法的にもパブロフによる古典的条件づけを行動研究のひな型とした。

行動主義の特徴
1)環境と経験の重視:わずかな生得的反応を除き,生活体の行動は経験により学習される。
2)機械論:外部の特定刺激(s)に対する機械的反応(R)が行動であり,心とは行動そのものに他ならない
3)客観性の重視:それゆえ心は行動をベースにして客観的に記述される。
4)人間と動物の連続性の主張:人間と動物の心はS-R結合の量と多様さの差に還元でき,基本的なしくみ(機構)は類似している

広汎性発達障害 - Pervasive Developmental Disorder -
自閉症障害 - Autistic Disorder -

広汎性発達障害
特定の能力のみに障害が認められる(特異的発達障害)のではなく、対人的相互作用、言語、情動行動といった多彩な領域に発達上の障害が認められるものの総称であり、この障害の程度によって、自閉症障害、レット障害、アスペルガー障害などと診断される。

自閉症(Autism)
1943年カナーによってはじめて報告された。主症状は
1)人間関係の困難
2)言葉をコミュニケーションの目的で用いる事が出来ず、なんとか言葉を発っせても反響言語の段階からなかなか抜けだけない。
3)同一性保持の欲求が異常に強い。
4)対人関係を忌避する反面、特定の物体には異常な興味を示す。
言語と認知の障害に基づく一種の発達障害と考えられ知的障害を伴う事が多い。

自閉性障害の特徴
 1)社会性の障害(情緒的接触ができない)
 2)コミュニケーションの障害(意志疎通の目的で言語を使用することができない)
 3)同一性保持の強迫的欲求
これらの特徴は3歳以前に現れるとされている。

自閉症
本来は、外界に意味を見出せず、空想的世界に生きる分裂病の 症状を意味するが,現在,わが国では幼児特有の障害を指すことが多い。

ブロイラー
スイスの精神医学者。初めて精神分裂病という名称を用い,その基本症状として 精神機能の連合の障害を重視した。

ミンコフスキー
フランスの精神医学者。フランス医学界にブロイラーの説を紹介し, ”生きた”現実との接触の喪失など、種々の分裂病の本質を提唱。

豊かな自閉
ミンコフスキーはブロイラーのいう自閉を”豊か”と”貧しい”に分け,豊かな自閉は内面の豊富さが残っている現われと考えた。

固着

 フロイトの精神分析理論の基礎的概念の一つ。幼児期から思春期にかけて発達する性本能のエネルギー、リビドーの一部が特定の性発達段階にとどまり、それぞれ対応する性の満足目標や対象に過大に配給されること。
 一方、リビドーの流れが途中で困難にあって、より前段階の固着点に逆もどりする退行とあいまって、その後の性格形成の歪みや神経症発現に不可欠なものとなる。

言葉のサラダ - Word-salad -

精神分裂病患者に現れる言語以上の症状のひとつ。後の選択や配列に混乱が生じ、重症の場合には意味が通らない発話となり、書記言語の場合にも同様な混乱が見られる。後の選択や配列には思考が介在しているから、言葉のサラダが生じたことは思考の異常が生じていることを示している。
ゴムの壁 - The wall of rubber -

ウィンは、各人が自己を確立しようとしても家族の役割の中に 引き戻されてしまう状態を、「ゴムの壁」に囲まれていると称した。

エディプス・コンプレックス
子供が両親に対して抱く、愛と敵意の欲望、罰せられる不安を総じたもの。 精神分析では、すべての病理現象のうちにこの三項関係をみて取り、 そのありかたを解明しようと努める。

ベイトソン
アメリカの人類学者。精神病の原因にコミュニケーション理論から接近したほか、ニューサイエンスにも大きな影響を与えたことで知られる。

ダブル・バインド
母から子へのコミュニケーションにおいて、二つの水準で矛盾したメッセージが 発せられ、子が困惑するという二重拘束状況。ベイトソンはこれが分裂病を 発生させると主張。

ウィン
アメリカの精神医学者。家族内力動の研究から、家族の感情が互いに不完全に 相補的になっている「偽相互性」と分裂病の関係を指摘した。

コルサコフ症候群 - Korsakov Syndrome -

記名力障害、前行性・逆行性健忘、見当識障害、の3徴を健忘症候群。場合によっては、作話をともなうものをコルサコフ症候群ととよぶ Korsakovによるアルコール中毒の際の多発性神経炎にともなう精神症状としての記載に由来。神経炎は必ずしもともなわず、またアルコール以外にも種々の病因(痴呆、頭部外傷など)で生じることから疾患単位ではなく症候群としてまとめられた。
コンプレックス - complex -

日常語としてはインフェリオリティ・コンプレクス(劣等感)の略称として用いられるが、本来は精神分析の用語。一定の感情に統合され、精神生活を左右する力をもつ無意識的な観念や記憶の集合をいい、〈観念複合体〉と訳される。フロイトが提唱したエディプス・コンプレクスはその代表例。コンプレクスという概念を最も強調したユングによれば、無意識的な過程で働く心的内容の集合で、さらに個人を超えた〈普遍的(集合的)無意識〉をも想定した。