牡羊座 - Aries -
黄金の毛皮を持つ空飛ぶ羊
白羊宮 (黄道12宮の第1宮の火の宮で火星に支配される)
ボイオティアの王アタマースには、雲の精ネフェレーとの間にプリクソスとヘレーという兄妹がいました。
正王妃イノーは、彼らを邪魔に思い、ネフェレーを追い出した後、兄妹をも排除しようと企みます。
ある春、小麦が凶作に見舞われたため、この時代の諸王がそうするようにアタマース王もデルフォイ神殿に使いを送り、神託を得ようとしました。
ところが実はこれこそイノーの企み通りで、以前小麦の種を炙っておかせたための凶作だったのです。
そして今、その使者をもイノは買収して、プリクソスを生贄とすれば凶作が止むだろうと、返事に言うよう説きつけます。
使者から偽の神託を聞いた王は困惑しましたが、神託を信じた国民に迫られ、
やむなく息子をゼウスの祭壇に連れて行き犠牲に捧げようとします。
その時危険を察知した母ネフェレーが現れ、プリクソスを雲霧に包んで空に引き上げ救い出します。
そして妹のヘレーとともに国外に逃がそうとします。このときの2人の乗り物が、宙を飛ぶ黄金の牡羊でした。
この羊はネフェレーがゼウスの腹心の神ヘルメスに頼んで譲られた物と言います。
二人は金の羊に跨って母国を後にし、海山を超えて行きます。
エーゲ海を越え空を飛び逃げる途中、ヨーロッパからアジアに渡る海峡にさしかかったところで、
ふと眼下を覗いてしまったヘレーは、高さに眼が眩み、
プリクソスがその腕を捉える間も無く波間に落下してしまいました。
この海は今のダーダネルス海峡にあたる場所ですが、この時からギリシアではヘレーの海、
ヘレスポントスと呼ばれるようになったと言われています。
妹を失い嘆くプリクソスを、金の羊は言葉を発して励まします。
やがて気を取りもどした彼は、さらに空を翔けてやがて黒海の奥の国コルキスに辿り着き、
その地の王アイエテスに保護されました。
プリクソスは無事に逃れきったことを感謝し、この金羊をゼウスの祭壇に捧げました。
しかし、残った黄金に輝くの毛皮に目をつけ、欲にかられたアイエテス王によってプリクソスは殺害されてしまいました…。
アイエテス王は奪った黄金の皮裘を国の宝とし、
アレスの聖地である森の奥深くの柏の木に掛け、それを火を吹くに守らせました。
後、英雄ヘラクレスやイアソンが大勢の勇者たちとともに巨船アルゴー号で
この地に乗り込み、このかけがえのない宝を手に入れるため、アイエテス王と戦うことになります。
金の羊はプリクソスを運んだ功を称えられ、ヘレを心配そうに振り返る姿が天の星座となりました。
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