内観療法 - Naikann Therapy -

仏教的人間観を基盤とした日本独自の精神療法で、吉本伊信によって1930年代に創始された。これは、浄土真宗の「身調べ」に端を発し、これまでの対人関係を自責的観点から徹底的に内省し、他者認知の変革を目指すものである。具体的には7日間続けて行う集中内観と毎日1〜2時間行う分散内観に分けられ、「してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと」という観点から家族や友人などの特定の人ごとに対人関係を経時的に考える。そして、カウンセラーが2時間に1回程度訪問して指導や助言をする。
内的統制型 - Intrinsic control type -

クライエントのタイプ分けで、心理精神的によく発達している人のこと。比較的自分の実力を信じていて能動的で、責任感も気力も優れた様相を示す。自分の感情のコントロールもでき、現在や未来を生きる自信を持ち、より高い自己開発を志向している。
多重人格障害 - Multiple Personality Disorder,略称MPD -
二重人格 - Double Personality -

正式名を解離性同一性障害。人格転換とも言う。普段の人格とはまったく異なる2つ以上の人格が一定の期間に現れ、再びもとの人格に戻る現象。元の人格にかえったときには、別の人格について記憶していないことが多い。

主因は幼児期の心的外傷(トラウマ)であり、とりわけ度重なる性的・肉体的虐待が原因という説が主流である。

幼児期以降のトラウマや、一時的な虐待でも、長期間にわたって、その人間のストレスへの耐性に重大な影響を与えることがあるが、多重人格までには至らないのが一般的である。トラウマが多重人格を生む過程は一部しかわかっていないが、日常とかけ離れた恐ろしい経験をすると、それを正常な意識に統合できなくなり、精神分裂を起こすからと考えられている。

不完全相互認知性・交替性多重人格
それぞれの人格が他方をはっきりとはいえないが認知している、 というタイプの二重人格。エランベルジュの分類による。

交替人格
3つ以上の人格が交互に出現する

交替意識
二つの人格が交互に出現する

『ジキル博士とハイド氏』に描かれているものが典型例。

日内変動 - Diurnal Variation -

病気の症状の一日の変動を日内変動という内因性のうつ病における気分の変動が典型例である。朝型に憂鬱で行動思考などの抑制症状がひどく、夕方になるにつれて軽くなるというものである。神経症のうつは逆に朝方気分がよく夕方になるにつれて元気が無くなる傾向があるが、内因性のうつ病ほど明確ではない。うつ病は、生体リズム(日内リズム)の乱れから早朝覚醒や途中覚醒などの睡眠障害を伴うことが多い。
認知療法 - Cognitive Therapy -

A.T.Beckによって始められた短期精神療法の一種。認知のゆがみに焦点を当てることによってうつ病やパニック障害などの治療を行うもの。認知を通した人間の主観的体験が人間の情緒体験と密接な関係を有すると言う理解に基づいている。

認知のゆがみ
自動思考と仮説/スキーマと言う二つのレベルに表れる。

自動思考
ある状況下で瞬間的に現れる考えやイメージ。

仮説/スキーマ
心のより深層に存在している自己・世界・将来に対する仮定的確信・心的態度・心的規則。

治療 … 患者と治療者が一緒に患者の認知のあり方を検証して行く共同経験主義が特に重視。その中でまず問題を明確化し、自動思考を同定・検討し、仮説/スキーマを同定・検討する。治療過程では、不適応的思考記録や宿題を通して認知のゆがみを検討していく。よく見られる認知のゆがみには、恣意的推論、二分割思考、選択的抽出、過大視/縮小視、極端な一般化、情緒的理由付け、自己関連付けなどがある。このような認知のゆがみに対して認知的技法と行動的技法でアプローチしていく。

ヌミノース - Numinous -

主体の意思を越えて意識に特異な変容を引き起こす宗教的経験。基本的にどの宗教体験にも共通。
ネオテニー - Neoteny -

本来的には、ある種内でいまだ幼形にある固体が生殖活動を示し始める現象。
今日では近縁の複数の種間で、一方の種では幼形である段階の形質が、他では発達の完了段階であるにもかかわらず、なお維持されている場合の後者のことを意味して使われることが圧倒的に多い。個体発達を進行させている一種の時計が、系統進化の過程で「異時性」(heterochrony)を示すのだという考え方も提唱されている。

ねずみ男 - Rat Man -

S.Freudが約11ヶ月間精神分析治療した強迫神経症患者。29歳の弁護士である患者は、軍隊で肛門にねずみを押し込むねずみ刑の話を聞いて以来、「父と恋人がこの刑を受けたら大変」という強迫観念に苦しむようになる。S.Freudはこの患者の分析を通して、思考の万能、疑惑、両価性、反動形成、隔離、肛門サディズム段階への欲動の退行、思考現象の性愛化などの強迫神経症の特性を明らかにした。
のみ込み - Engulfment -

R.D.Laingによって使用された語。他者との関係が自分の同一性に対する破壊的脅威として体験されるような、一時的存在論的安定を欠いた人たちを悩ませる不安を表す。