マージナル・マン - marginal man -

周辺人、境界人と訳される。二つ以上の異質な社会や集団に同時に属し、両方の影響を受けながらも、そのどちらにも完全には帰属していない人間のこと。不安定で動揺しやすい行動様式を示す。その一方で、一定の社会への単純な融合ができないことから、相対的に〈啓蒙された〉存在でありえ、創造性を内包する可能性をもつ。歴史的には、ディアスポラのユダヤ人、アジアやアフリカのキリスト教改宗者、また米国の少数移民集団などはその例。
マスキュリン・プロテスト - Masculine protest -

男性的抗議のこと。S.Freudは、女性は男性器がないので男性を嫉妬したり憎悪するとし、これが女性の劣等感の根源にあると考えたが、A.Adlerはこれに対して、女性が男性を妬むのは、生物学的問題ではなく社会的問題であると考えた。すなわち、女性にとって女性であることは社会的に見て一種の劣等性であるが、その劣等性を女性が男性のように振舞ったり、あるいは、男性の悪徳を真似ることなどで、過度に保証することをマスキュリン・プロテストと呼んだ。この後は、女性についてだけではなく、過度に男性性を誇張する男性についても使われている。
まだら痴呆 - Lacunal dementia -

痴呆の性状を示す用語。脳動脈硬化性痴呆では、記銘・記憶力障害が高度の割には日常的な判断力、理解力が比較的保たれ、知能の侵され方にむらがあるため、その痴呆の性状を表現して「まだら痴呆」という。これに対して老年痴呆のように侵され方が一様なのを「び慢性痴呆」あるいは「全般性痴呆」と呼ぶ。
マルトリートメント - Maltreatment -

トリートメントとは、世話、ケア、治療などの意味。ソーシャルワークの介入を指す言葉として用いられたり、施設や家庭でのケアを目指す言葉として用いられたりする。マルトリートメントは、このような行為がうまく行われていない状況をさす。近年では、子どもの虐待を指す言葉としても用いられている。その際には、「不適切な関わり」と訳されている。子どもの虐待は、一般には、child abuse and neglectという英語が当てられるが、日本語および英語ともに、保護者に与えるマイナスイメージが強いこと、また行為の範囲が狭く受け止められがちであることにより、マルトリートメントや不適切な関わりという用語が用いられる場合がある。
ミュンヒハウゼン症候群 - Munchausen syndrome -

R.Asherによって1951年にはじめて記載された症候群で、ほらふき男爵と呼ばれたミュンヒハウゼンにちなんで命名された。アッシャー症候群、Ahasverus(さまよえるユダヤ人)症候群、hospital hoboes(病院放浪者)とも呼ばれ各地を転々とし、身体症状を捏造して多くの病院に入退院を繰り返し、虚偽の多い劇的な病歴や生活史を述べる患者を総称しており、ヒステリー、精神分裂病、マゾヒスト、人格障害などに認められる。親が子どもに人工的操作で派手な症状を起こさせて受診するのは代理ミュンヒハウゼン症候群という。
無意識 - unconscious -

1) 記述的には、一定時点において意識されない事象や行動を意味する用語として、形容詞や副詞として用いられる。

2) S.Freudの精神分析理論による局所論的な立場からのもので、心的構造ないしは心的体系を構成している一領域(局所)を意味する用語。通常では意識化不可能な心的内容を含んでいる領域、を示す。つまり、意識および全意識に対する無意識である。

2) 力動的(dynamic)な立場からは、無意識の内容、つまり、「無意識的なもの」を意味する。それは、抑圧の作用によって意識―全意識系に現れることを阻止されているものである。なお、これらは快感原則にしたがっている。

無動機症候群 - Non-motive syndrome -

大麻を長期に使用すると、意欲の滅退、関心の狭小、覇気の減少などを特徴とするこの症候群を呈することがあるといわれる。

マリファナ精神病
大麻は身体的、精神的依存を形成することが少ないといわれるが、 長期の使用により、精神病に似た症状を誘発するとの報告がある。

明確化

 クライエントが面接の中で語っていながら自分では気付いていない、潜在的な情緒や葛藤を治療者が言葉にして伝え返す介入のこと。
メタアナリシス - Metaanalysis -

治療効果の研究で、複数の治療方法の間で効果を数量的に比較・評価する統計手法。以前は、文献レビューによって治療効果を評価することが一般的であったが、レビューを行う者の主観の影響という問題があった。近年では、多数の、対照群のある治療効果研究から効果サイズを計算し、それに基づき数量的な評価を行う場合が多い。
メタ認知 - Metacognition -

目標を達成するために、自分の遂行している認知過程の状態や方略を評価し、行動の調節・統制をおこなう過程(モニタリング)や、モニタリングに伴う感覚・感情(メタ認知的経験)、評価や調節に使用するために認識された知識(メタ認知的知識)の総称。
認知過程を意識化することが、計画的な行動や、行動の般化を可能にすると考えられ、重視されている概念。
1970年代初めに、記憶の領域で研究が始められたが、その後さまざまな認知的行為について研究が行われている。

メタ認知的知識
遂行する課題の構造や過程についての知識、課題を行なう方略に関する知識、課題を行う自分の能力や特性に関する知識、およびそれらが組み合わさった知識が含まれる。
比較的安定した事実的・長期記憶的知識であると考えられ、質問紙や面接により調べられてきた。

メタ認知は、認知発達や特定領域の行為の熟達化に伴い、発現することが示されている。だが、意識化の程度や獲得の過程、機構に関しては、まだ一定の知見は得られていない。

妄想 - Illusion -

妄想
病的状態から発生する根拠のない主観的な確信で、それと相反する事態に直面したり、他人に説得されてもその誤謬を訂正しえない。種々の精神疾患にみられる。妄想内容により、被害妄想、誇大妄想と、自分が他人よりも劣っていると思い,自分を過小評価する微小妄想に分類される。

被害妄想
妄想の一種。特定または不特定の他者が自分に危害を加えると信じこみ、そのような事実はないと説得されてもその非合理性を訂正し得ない。精神分裂病に多くみられ、迫害妄想、関係妄想、嫉妬妄想などもこれに属する。

誇大妄想
躁病、精神分裂病、進行麻痺まひに多くみられる妄想の一種。英語ではmegalomaniaないしdelusion of grandeur。自己の能力、容姿、地位などを過大評価し、それを確信すること。

燃えつき症候群 (バーンアウト・シンドローム) - burnout syndrome -

燃料が燃えつきたかのように、それまで目標を掲げて仕事などに生きがいを感じて熱中してきた人間が、なんらかの理由で意欲を失い、スランプに陥る状態に対して、米国の精神分析医H.フロイデンバーガが1980年に命名したもの。

背景には、自分が目的とすること以外に関心がもてず、ストレスを解消する手段をもたないまま成功を求めた結果の、ストレス過剰状態があるとされる。昇進を果たした、大きな仕事を成功させた、など目的を達成した直後から起こることが特徴で、抑鬱感、無気力、頭痛やめまいなどの心身症状が現れる。

近年、大学受験生が合格した直後に同様の状態に陥る傾向が見られ、問題になっている。

モラトリアム人間 - Moratorium personality -

ここでいうモラトリアムとは、アイデンティティ(自我同一性)の確立を先送りにする心理的猶予期間のこと。こうした状況にある人をモラトリアム人間という。

精神分析家E.エリクソンが提唱した〈青年期モラトリアム〉により、世界的に認知された。

日本では1978年、フロイト精神分析学派の第一人者・小此木啓吾によって書かれた《モラトリアム人間の時代》の大ヒットによって、一般的に使われるようになった。

類似の概念として、1983年に米国の実存心理学者ダン・カイリーが提唱した〈ピーター・パン・シンドローム〉がある。

モラリズム - Moralism -

幼児は物と心のく区別をすることが出来ないため、物の動きを心の働きとして説明しようとする。例えば、ボートは賢いから水の上に浮くことが出来ると考えるなどがある。