IQ 知能指数 - Intelligence Quotient -

知能の発達の程度を示す尺度、知能テストの結果の表現法の一つ。精神年齢を暦年齢で割り100倍したもので、L.M.ターマンのスタンフォード・ビネ検査において算出されたのが最初。精神年齢=暦年齢の場合は100で、ターマンは140以上を天才または準天才とした。
アイコニックメモリー - iconic memory:あいこにっくめもりー -

視覚における感覚記憶。
容量はきわめて大きく、持続時間は100〜300ミリ秒
後続の視覚刺激から妨害的な影響を受ける
保存される情報はアイコン(icon)とよばれる。
ナイサーの用語
スパーリングは視覚的情報貯蔵(visual information storage)と呼んだ。

愛情遮断症候群 - emotional deprived syndrome -

愛情欠乏型小人症
乳幼児において、抱く、あやす、一緒に遊ぶなどのスキンシップを伴うおとなによる子どもへのアタッチメント(愛着)行動が不足すると、情緒の発達、言語や知的能力の発達、身体発育が遅れる。

母親剥奪症候群
かつての乳児院や養護施設において、慢性疾患で長期間入院を余儀なくされた乳幼児は、ホスピタリズム(施設病)兆候としてこれらの症状を呈してきたが最近は、家庭で養育されている子どもにそのような症状を認めることが多くなってきた。これは、ネグレクトなど母親の愛情が欠乏した結果である。

愛着 - Attachment -

特定の人間と情緒的に結びつきたい欲求を持つ状態。その対象,愛着行動の様式は変化するが,この欲求は生涯にわたって存在する。

愛着の欲求
先天的にあり,乳児期にこの欲求が充足されれば子どもの環境に対する不安は低くなり,好奇心が高まって,探索行動が始まり,行動範囲は拡大していく。逆に乳児期に愛着欲求が充足されない場合には,その後のパーソナリティ形成において支障をまねきやすい。

アイソモーフィズム - Isomorphism -

異質同形性のこと。二つの性質の異なる複雑な構造体の形が似ていることを意味する。

家族療法では、一定のパターン化された家族成員相互の交流を指す。それらの交流は、ある家族の過程を反復しているが、その過程もまた家族の構造を反復している。面接場面での家族成員間の些細なやりとりに焦点化し、そこから現実の家族の構造上の問題点を改善させる理論的根拠ともなっている。

アイデンティティ - identity -

自我によって統合されたパーソナリティと社会との関わりを説明する概念。同一性、主体性、帰属意識などと訳される。元は哲学用語。

エリクソン
社会学におけるアイデンティティ概念を定義した。変化する環境の中で自己がさまざまな役割を演じるとき、そうしたさまざまな『私』を統合する変わらない自己をアイデンティティと呼んだ。フロイト理論を基礎に、個人の発達過程のなかでとくに青年期にアイデンティティの危機が顕在化するとしてこの概念を定式化したが、それは個人と社会の関係性をとらえるための概念として広く受け入れられ、適用されてきた。

現代におけるアイデンティティの喪失の問題は個人と社会の不適合の現象として、社会学の研究課題。最近では、人類学や政治学において、アイデンティティの、個人を他者との連鎖の中に位置づけ、個人を超えた想像の全体へと結びつける側面が注目され、近代世界における『想像の共同体』としてのネーションやエスニシティを、個に強固な集団的アイデンティティを付与する物語としてとらえる視点が有力となっている。

アイデンティティ・ステイタス(identity status)
マーシャのアイデンティティ測定の枠組みによって得られる,アイデンティティの類型。およそ15〜30分間の半構造化面接により測定が行なわれ4つのステイタスに分類される。
1)アイデンティティ達成型
2)モラトリアム型
3)早期完了型
4)アイデンティティ拡散型

愛の三角理論 - triangular theory of love:あいのさんかくりろん -

「親密性」「情熱」「コミットメント」の3要素で、8種類(好意・愛情・空虚な愛・愚かな愛・情熱・ロマンティックな愛・完全な愛)の愛の類型を説明する
スタンバーグ
Sternberg,R.J. 1986 A triangular theory of love. Psychological Review,93,119-135

アクション・スリップ - action slip:あくしょん・すりっぷ -

認知の制御過程における実行段階でのエラー
行動を実行する場合を考えると、計画を考える段階でのエラー(ミステイク)・実行済みの行動の記憶の過程でのエラー8もの忘れ)・行動を実行する過程のエラー(スリップ)が考えられるが、このうちアクションスリップは3つ目の実行をする際のエラーである
目標の切り替え(goal seichness)

アクティング・イン型

グラッサーは自我の弱さを特徴とする人たちを性格神経症と呼んだが、 そのうち、受動的で先のことは考えず、薬物を口にしがちなタイプを アクティング・イン型とした。
アスペルガ−障害 / 自閉性障害(自閉症)の高機能群

広汎性発達障害(中枢神経系の機能・発達障害により、広汎にわたる精神障害がみられるもの)の一類型。自閉症と同様に、社会的機能や対人関係の問題、常同的・反復的な行動などがみられるが、著しい言語の遅れがみられないことが特徴的。
アートマン

 我または個我。本来は呼吸の意味で用いられたが、正気、生命原理、霊魂、自己をあらわすようになった。

古代インドのウパニシャッド哲学
自己の中に中心となるものを認め、これが自己を主宰し、主体的に存在するものとして考え、これをアートマン(我)と呼んだ。そしてこの我が宇宙的最高原理であるブラフマンと同一とする梵我一如の思想を生み出した。

佛教
ウパニシャッド哲学を批判して、このような主体としての我は認められないとして、すべてのものは、因縁によって生じ、普遍の実態である我は存在しないという諸法無我を説いた。

アダルト・チルドレン(AC) - Adult Children of Alcoholics(ACOA) -

 アルコール依存症の家庭に育った子どものこと。最近では、Adult Children of Dysfunctional Family(ACOD−機能不全家族に育った子ども)も含めた総称として、拡大的に使用されるようになってきた。「大人になりきれずに成長した人」と、日本では誤解されることもある。
 成長期に子どもらしく過ごすことのできない家庭環境で育っている。親から「子どもらしい」ありのままの姿を肯定されず、自分に自信がもてなくなってしまったのだ。そのため、自己主張や感情表現が苦手であったり、自分の生きる価値を見いだせない精神状態であったりする。
 子供時代の心の傷を癒せすことができないまま成長すると、大人になってから自分の生きる価値を見いだすため、また、逆に自分自身の生きる価値を見いだせずに、必要以上に他人の世話を焼いたり、自己犠牲的な行動をとったりする。他人に対して、過剰に依存的な性格になることもある。自己表現や感情表現などがうまくできず、他人とのコミュニケーションがとりにくい場合は、言動が衝動的になったりすることもある。
 苦しい精神状態におかれていることも多いが病気ではない。

アドレナリン - Adrenalin -

生体にストレスが加わると、からだを守るための反応として、副腎からアドレナリンというホルモンが分泌される。このホルモンが、心臓の心拍数を増し、血管を収縮させて血圧を上げ、呼吸数を増大させて非常事態に備える。
アニミズム - animism -

文化人類学の概念で、原始民族の信念に発する。自然を擬人的に考え、無生物や植物などに人間と同じ心や意志があると信じる幼児の心理的特徴のこと。

ピアジェ汎神論
心理学上で自らの研究を通して,幼児や児童にアニミズムが存在していることを示した。
ウェルナーはこのような知覚様式を相貌的知覚(physiognomic perception)と呼んだ

アパシー

無感動、無感情、無関心、感情鈍麻。

本来なら、ある刺激に対して感動したり、興味を持ったり、感情表現が生ずるものが、アパシーに陥るとこれらの反応が生起しない。うつ病や精神分裂病患者によく見られる症状だが、現在では学生無気力症候群(student apathy)として心理学では注目を浴びている概念。

スチューデント・アパシー
学業に対する意欲が完全に喪失し,自発的,能動的な行動が消失し,学業を続けることが不可能となる。本業の勉強以外には熱心なところから、敗北を回避するために選択的退却ともいわれる。

無気力・無感動
スチューデント・アパシーに似た病理は大学生以外にも見られ、アパシー・ シンドロームと一括して呼ばれる。心理社会的猶予期間と関係が深い。

アフォーダンス - Affordance -

afford(〜を与える・産出する)という語を元にしたギブソンによる造語。環境世界は人間や動物にとって、単なる物質的な存在ではなく、直接的に意味や価値を提供(アフォード)するものであると考える。従来の間接的認識論の立場では、外界の物質的刺激を感覚器官によって受容し、心的世界によって意味や価値を与えるとしていたが、アフォーダンスの考え方は、環境の方に意味や価値が実在するとみなす。
アーラヤ識 - alaya vijnana -

唯識学でいう普通の人間(凡夫)の心(識)の最深の領域のこと。

alayaは ' 蔵 ' を意味し、過去・現在・未来にわたって行為(カルマ)の残存影響力(種子)を蓄え、生命の維持・執着作用を行う輪廻の主体。その性質は善悪いずれでもなく、この世でどのような身口意(身体と言葉と心)の行為をし、種子としてそこに溜めていくかによってどちらにでも変わりうるという意味で迷いと悟りの根拠とされる。

アライグマ症候群(不潔恐怖症/潔癖症候群)
- Lesser panda syndrome -

自分の手が汚れているのではないかという恐怖感に襲われ、何時間も繰り返し手を洗わずにはいられなくなる病気。飼育されているアライグマが食べ物を『洗う』ようすになぞらえた命名。強迫神経症の一つ。生来の性質にストレスが加わって発症するケースと、脳の障害などの器質性の要因で発症するケースがある。
アレキシサイミア(失感情症) - alexithymia -

心身症患者に特有な心理的特性であり、シフネオスが提唱した概念。自らの感情の認知とその表現に欠けており、空想性、想像力に乏しく、自分の置かれている状況や症状についてはくどくどと述べるが、それに伴う感情を表には出せず、面接者とのコミュニケーションも困難であるという状態をさす。
暗示 - Hint -

英語ではsuggestion。強制力を用いずに他者の意志を統制したり、特定の認識、意見、信念、価値観などを無批判に受容させること。また、その状態、その結果生起する内的過程、そのために用いられる刺激など。

催眠暗示
暗示の極端なもの。特定の状況下に、特定の暗示者により、反応者の注意の範囲や意識状態は人工的にせばめられ、暗示者や暗示状況の発する刺激のみが選択的に受容されて反応をひき起こすに至る。暗示は一般に暗示者の被暗示者に対する権威が大きいほど効果的である。

自己暗示
刺激源が自己内に起因する。

暗示療法 - Hint treatment -

患者が医師を信頼する時機をとらえ、あるいは催眠状態において、暗示を与え、病的症状をなおす方法。ノイローゼ、ヒステリー、強迫神経症等の種々の症状、たとえば不眠、不安、麻痺等に適用される。
アンビヴァレンス - ambivalence -

同一の対象に対して,尊敬と恐れ,愛と悲しみ,高慢と卑下などの全く相反する心的傾向や態度及び感情が,一人の人間の中で,統制を失ってバラバラに存在すること。
EQ (こころの知能指数 / 感じる知性)
- Hint treatment -

米国の心理学者ダニエル・ゴールドマンDaniel Goldmanが著書『Emotional Intelligence』の中で提唱したことがきっかけとなって広まった概念。

物事を適切かつ正確に処理することができる知的な能力を示すIQ(知能指数)に対抗して考え出されたもの。『感情面や情緒面において健康で,かつ人間関係を適切にこなせる人格的能力』と定義される。

1)セルフ・コンセプト(心内知性)
2)ソーシャル・スキル(対人間関係知性)
3)自分と他者の状態を同時に認知できるモニタリング能力(状況判断知性)
の3つの知性によって構成される。これらの3つの知性をそれぞれどのくらい備え、バランスよく持っているかによってEQの高さが決まる。

心内知性
自分自身で自分の心理的状態を捉えることができる知性のこと。これによって、自分の感情をコントロールできることを意味する。EQのもっとも基本となり、次の対人間関係知性とは、他者に適切かつ効率的に働きかけることができる知性のこと。他の人に対応する際に発揮される一種の技能。

状況判断知性
相手の様子を理解し、相手を受け入れ、そのうえで、相手と自分との関係を客観的に判断する能力のこと。

EQの高さは,特に企業内や職場において有効とされ、職場でEQが不足すると、生産能力の低下や納期の遅れ、事故の発生や人材の流出が起きやすいともいわれる。

意識 - Consciousness -

通常は人が自己または外界についてもつ直接の明証的な認知をさす。

デカルト
物の世界とは異なる独自な心の世界(レス・コギタンス)を想定した。ここから、内省による意識内容の分析を主題とする19世紀の実験心理学が成立。

W/ジェームズ
意識の流動性(意識の流れ)を強調し、意識はむしろ生物の最高次の適応機能を示すものとみる。

フロイト
意識の背後に潜み、ひそかにこれを規定するより広大な無意識の領域を承認した。行動主義の心理学では、その主体以外には知り得ない意識は科学的研究の対象としては無意味であり不必要と考える。

意識の作用を重視する立場はとりわけカント、およびその構成主義を引き継いだフッサール(志向性)にも見られる。

移行対象 - Transitional Object -

ウィニコットの用語。赤ん坊にとっての最初の"自分でない"所有物をさす。具体的には生後4ヶ月から1年ぐらいまでに用いられるようになる毛布の端や毛糸の房など。それは暖かさと安心を与え、感触を持ち、生命力や実在感を感じさせる。発達的には、それ以前の指しゃぶり、こぶししゃぶりなどの自体愛的現象と、その後のぬいぐるみや人形との中間にある。母親の乳房を象徴するが、その象徴性よりも実在性に価値があり、心的概念として魔術的に支配しうる内的対象とは区別される。また、現実の母親のように完全に外界の統制下にある外的対象とも区別され、両者の中間領域にある。外的対象の現実的機能が適切であれば、内的対象も生き生きとしてほど良いものになり、移行対象が幼児にとって意味あるものになる。発達的に見ると移行対象は口唇性愛と真の対象関係、幼児の一時的創造性と現実検討による客観的知覚、魔術的な全能的統制と巧みな操作による統制との、中間領域にあるといえる。

ウィニコット
イギリスの精神分析家。小児病院に40年勤務,豊富な臨床経験から 乳幼児の母子関係理論を発展させた。著書「遊ぶことと現実」は多彩な 分野でくり返し,引用される。

移行対象
人形、ぬいぐるみ、毛布など,客観的にみるとただの物であるが,ある人(とくに乳幼児)にとってはかけがえのない愛着の対象となるような存在。内的体験から 外的世界への移行の橋の役目をする。

移行領域
完全に内的な幻想や幻覚でもなければ,純粋に客観的に知覚できるわけでもない,その中間の領域。

リンポ界
大人になって忘れられる”子ども時代の宝物”は,捨てられるわけではなく, リンポ界というところにそっと置かれる、ウィニコットは言う。

イサコワー現象 - Isakower Phenomenon -

Isakower,O.が1938年に発表した「入眠に関連した現象の病理心理学に対する一つの寄与」という論文の中で述べた一群の主観的感覚。身体像が歪曲したり、めまいを感じたり、音が聞こえたり、柔らかい塊のようなものを身体の外側と口の中に感じたりする。もっぱら入眠時に生じるが、そのほか、目覚めるときや発熱したときにも見られる。癲癇のアウラ、既視体験、特定の精神病状態などとも密接に関連している。
異常心理学 - Abnormal Psychology -

異常な心理現象や病的な心理状態のほか、夢や催眠などを対象とする心理学。

方法からいえば一般心理学と変わらないが、対象からいえば精神病理学Psychopathologieと重なり、精神医学の研究と密接な関係をもっている。異常心理学の研究の主要な流れには、精神病理学的な疾病分類を基礎にする研究、フロイトを祖とする精神分析学派の原因論的研究、幻覚・妄想などの症状の精細な記述を基礎にする研究などがある。

異食症

異嗜症、あるいは異味症とも。栄養のない紙、土、爪、虫などをくり返し食べたり、同じ食品や飲料、嗜好の範囲を超えた酢味、辛味などを、極端に偏って食べること。躁鬱病やヒステリーなどの神経障害、栄養失調、寄生虫症による栄養障害によって生じるほか、軽度のものは、妊娠時にもみられる。また幼児では、高度の鉄欠乏性貧血のほか、精神発達遅滞、精神障害や脳炎後遺症をもつ場合にみられやすい。
依存症 - Dependence -

アルコール・薬物・買い物・恋愛 … 対象はさまざま。
依託うつ病 - Anaclitic Depression -

母親に養育されていた乳児が母親から引き離されて乳児院などへ収容されると、すすり泣き、体重減少、不眠といった状態を経て3ヶ月後には周囲との接触を拒否し、運動、動作は緩慢となり、無表情、無感動になってくるというもの。

この症状群は,スピッツとウォルフによって初めて報告された。

遺伝病 - Hereditary disease -

遺伝的要因による病気を一般に遺伝病と呼ぶ。遺伝的要因が果たす役割の程度により狭義の遺伝病と広義の遺伝病に区別する。狭義の遺伝病にはメンデル遺伝病(単一座位の遺伝子の異常がメンデルの法則に従って発現するもの)があり、広義の遺伝病には染色体異常症(染色体の数や構造の異常によって起こるもの)、多因子遺伝性疾患(複数の座位の遺伝子と環境要因が作用しあって発生するもの)が含まれる。メンデル遺伝病は病的遺伝子の違いにより、

1)常染色体性優性遺伝病
病的遺伝子が1個あれば発病する疾患で、すべての世代に発現。片親が患者なら子は平均して半分が患者、その家系内の健康な両親からは患者は生まれない。軟骨異栄養症、裂手などが代表的疾患。

2)常染色体性劣性遺伝病
病的遺伝子が2個対になってはじめて発病するもので、片親が患者でもう一方の親が健康な場合、その子には現れない。保因者同士の近親婚などで病的遺伝子が対になるような場合、その子は健康者と患者が3対1の比で現れる。フェニルケトン尿症、白皮症、ガラクトース血症などが代表的疾患。

3)伴性劣性遺伝病
伴性劣性遺伝病は圧倒的に男性に多く、父親が患者のとき、息子はすべて正常で娘はすべて保因者、娘の息子たちの半数は患者。赤緑色盲や血友病が代表的疾患。染色体異常症には大量の遺伝子が増減しており、多くの異常を起こす常染色体異常症と性の異常が中心となる性染色体異常症があり、前者の代表例がダウン症候群、後者の例がクラインフェルター症候群,ターナー症候群である。多因子遺伝性疾患は口唇裂、口蓋裂、先天性心臓病、幽門狭窄症、近視などが代表的疾患。

一次過程・二次過程

エスは快感原則に従い、一次過程を用いる。快感原則に従うというのは現実を無視し、即時的満足を求めること。満足に役立つ対象の記憶表象,対象の内的像を作ること。満足に役立つ対象の記憶表象を生じる。

自我は現実原則に従い、二次過程を用いる。現実原則に従うというのは、現実を考慮し,一時的に満足を延期すること。外界の現実を見て、満足を得るのに必要な行動の計画をたてる。論理的、合理的に考える過程、現実的な思考過程。この現実を考慮した手続きを踏むことで、はじめて十分な満足が得られる。

イド (エス)

フロイトによって提唱された精神分析的人格構造論を構成する主要概念。自我、超自我と並ぶ重要な要素。

特徴
本能衝動の種々の心的表象からなり、緊張解放のみを目的とする快楽原則に従い、その過程が意識されない点。この本能衝動は基本的に性衝動(リビドー)をさしている。フロイトは性衝動のほかに攻撃衝動をもイドに属するものとみなしたが、この考えは彼の後進者たちに必ずしも受け入れられていない。

イネーブラー

ソーシャルワーカーに特徴的な役割の一つ。可能ならしめる人、あるいは側面的援助者とも訳される。

クライエント自身が自分の問題を解決するのを可能にする人という意味。クライエントの主体性や自己決定の尊重といった原理をワーカーの立場から具体化した役割といえる。その意味で、ソーシャルワーカーの本質を示す重要な役割となる。

イニシエーション - Initiation -

特定の社会集団に加入する際や組織、共同体の中で新しい地位に移行する際に、地位、所属の変更を社会的に認知するために行なわれる儀礼を総称していう。通過儀礼の一種。少年から成人への移行に際して行われる成人式のように社会の成員すべてが経験するものと、秘密結社、宗教集団などへの加入時に行なわれる特定の者に限られる秘儀的な儀礼がある。
EPPS - Edwards Personal preference Schedule -

エドワーズにより、マレーの欲求理論に基づいて作成された質問紙法検査。正常な人が持っている比較的独立したパーソナリティ変数を測定することを目的としていて、行動の異常性を検出したり、症状を診断したりするためのものではなく、教育相談、学生相談、進路指導などを含むカウンセリングに適応される質問紙法検査。
イリノイ心理言語能力テスト - Illinois test of psycholinguistic abilities -

イリノイ大学でカークが中心になって作成した言語学習に障害をもつ子ども達を診断するための検査。オズグッドの言語媒介仮説を背景とした独自の臨床モデル、コミュニケーションモデルに基づいて作られている。言葉の理解、言葉の類推、言葉の表現、文の構成など10の下位検査によって、個々の子どもの言語能力の個人差異を明らかにし、言語障害をもつ子どもの治療学習を効果的に進めるための手がかりが得られるようになっている。
インシュリン・ショック療法

精神分裂病の治療法。空腹時にインシュリン高単位を皮下注射し、低血糖による昏睡こんすいを起こさせ、30〜60分後ブドウ糖静脈注射で覚醒かくせいさせ、十分な食事を与える。

これを20〜40回繰り返し1クールとし治療上の単位とする。偶発事故の危険もあり、薬物療法が導入されてからは殆ど用いられない。

インフォームドコンセント (説明と同意/告知義務) - Informed Concent -

医療や心理的援助を受ける個人の権利および利益を擁護する基本的姿勢をあらわす倫理的・医療法学的概念。初め癌治療などの医学領域で取り上げられたが、心理臨床でも大きな課題となっている。個人が自分の受ける行為について知る権利(接近権)、情報を得た上でその医療や心理的援助を受けるか否かを決める権利(自己決定権)、医者や心理臨床家など専門家側の伝える義務(還元義務)、の3点から成り立っている。
ウェルナー症候群 - Werner's syndrome -

20歳代から白髪、皮膚の萎縮、白内障、骨の萎縮、動脈硬化、癌、性腺機能低下症などが現れ、急激に進行する遺伝性の難病で、多くは 40歳代後半で老いて死に至る。報告したドイツの医師ウェルナーの名をとってこの病名がつけられた。これまでの研究では、この病気のもとになる遺伝子の突然変異が存在することはわかっていたが、それがどこに潜んでいるか、詳しい位置は突き止められていなかった。1996(H08)年春、老化の研究に取り組んでいるエイジーン研究所(鎌倉市)などの共同研究チームが、その遺伝子を発見。老化の仕組みを探る新たな手がかりが得られそうだと期待されている。
鬱 病 (抑鬱症)

躁鬱sou-utsu病の鬱状態に似ているが、1回以上鬱病を経験したのち、躁状態にならない場合をいう。

神経性鬱病
心理的な原因がわかる場合

内因性鬱病
原因のわからない場合。

感情の憂鬱と意欲の抑制を主柱とする。感情の点では気分沈滞、不安、厭世ensei、自己卑下感など、意欲と行動の点では決断実行の不能、抑制されて苦しむという状態など。思考の点では思考渋滞し、話のまとまりが少ないなどの症状が認められる。憂鬱感は午前中にひどく、午後から夕方にかけて軽快するという日内変動が特徴の一つで、そのほか罪業感・罪責感や自殺志向、妄想などがあり、身体的にも不眠、食欲不振、便秘、月経不順などがある。

仮面鬱病
精神症状が現れず、もっぱら身体症状だけを訴えるもの。

経過
数週間から数ヵ月で寛解するが数年にわたるものもある。

初老期(退行性)鬱病
45歳以降に初発し苦悶性興奮を特徴とするもの。

高照度光照射療法(Light therapy)
多くは秋から冬にかけてうつ状態を呈し、春から夏にかけては寛解するうつ病の一群。季節と深い関連。方法は太陽の昇り初めと同じくらいの2000〜2500ルックスの照度が用いられる。照射場所は目を中心に顔に当たればよい。患者はずっと光を見る必要はなく、1分間に1〜2秒見ることで効果が得られる。時間帯としては早朝・夕刻が効果が現れやすい。一回の照射では30分〜2時間が適当。効果としては早ければ3日くらいで改善されるが、持続も短く3日くらい。

ウロボロス - Uroboros -

もとはギリシア神話に現れる自分の尾をくわえて丸まっている蛇。ユングはのE.Neumannが「意識の起源史」などで、無意識から分化した個人意識が発達する過程を描き、人類の神話的時代と個人の幼児期に共通する、未分化で、ある意味で完全で全体的であり、自己完結的・内閉的でもある段階の自我状態を象徴する用語として採用した。
永遠の少年 - Puer Aeternus -

大人の世界を拒否して、いつまでも思春期の心情で生きたがる大人のこと。親に呑み込まれて大人になれなく、現実原則の中で生きるだけの自我が育っていないともいえるが、人生の夢と心情の豊かさが利点でもある。
エゴグラム - Egogram -

バーンの弟子であるジョン・デュセイによって作られた心理検査。自我の状態を心的エネルギーの配分によってグラフに表したもの。そのエネルギーはCP(批判的な自我)・NP(保護的な自我)・A(大人の自我)・FC(自由な自我)・AC(順応した自我)に分けられる。そして、それらのエネルギー配分を折れ線グラフに表し、そのプロフィールの上下やほかのエネルギーとの関係を似てその人の自我状態を解釈する。
エコラリア(反響言語) - Echolalia -

他者の話す言葉や単文が意味を伴わない形で反復される病理的言語を指し、言語発達の途上で見られる発達的オウム返しや模唱とは区別する必要がある。自閉症児によく見られる言語症状。他者の発話の直後に生じる逐語的な反復(即時性反響言語)と発話が経ってから、その子ども自身の何等かの意図に基づいて独語のように発現する(遅延性反響言語)の2つのタイプがある。
選択的セロトニン再吸収阻害物質
- Selective serotonin reuptake inhibitors;SSRI -

新世代の抗鬱剤の一群の事。そのメカニズムは、神経伝達物質であるセロトニンを放出するシナプスに選択的に作用し、シナプス前部のトランスポーターからのセロトニンの再吸収を抑止し、シナプス中のセロトニン濃度を上げる事で、セロトニンの吸収を促進するというもの。

代表例
「ルボックス」「デプロメール」等。

オイディプス - Oidipous -

ギリシア伝説のテーバイ王。慣用でエディプスとも。ライオスとイオカステの子。息子に殺されるとの神託を受けた父王に捨てられたが、長じて国外を旅しているうち、心ならずもある老人(実はライオス)を殺し、のちテーバイを苦しめていたスフィンクスの謎を解いて王となり、先王の王妃を妻とし4人の子を得る。やがて自分が知らずして父を殺し、母と交わったことが明らかとなり、自ら両眼をえぐり出し、王位を捨て娘アンティゴネとともに諸国を放浪した。ソフォクレスの《オイディプス王》《コロノスのオイディプス》をはじめ、セネカ、コルネイユ、ジッドなどにより、多く作品化された。フロイトの用語〈エディプス・コンプレクス〉も、上の物語から採られたもの。
エディプス・コンプレクス - Oidipous complex -

精神分析の用語。人間の無意識心理についての最も基本的な概念の一つ。人間は幼児期において異性の親に対し近親相姦き的愛情をいだき、同性の親を憎むという経験をもつが、これは社会的に容認されないため、意識にとどめることができずに無意識内に抑圧される。この抑圧された感情を伴う心的表象(コンプレクス)をエディプス・コンプレクスという。ギリシア神話に登場する、自ら知らずに父を殺し母と結婚したエディプス王(オイディプス)にちなむ用語のため、狭義には男性の場合に限り、女性の場合はエレクトラ・コンプレクスと呼ぶこともある。
オートソジー

他人を見て,自分とうり二つのコピーだ、と確信する。その相手のことを オートソジーまたは二重身という。

ソジーのイリュージョン
親しい人や家族を見ても”生き写しだが別人だ”とする替玉錯覚。だれを 見ても”敵の変装に違いない”というのはフレゴリの錯覚。

横断的研究 - Cross Sectional Method -
縦断的研究 - Longitudinal Method -
コホート分析
- Cohort Analysis -

横断的研究
 いくつかの発達段階ごとにそれぞれ独立の被験者群を設定して資料を集め、それらを比較・対照させることによって,各段階の発達的特徴や発達の経過を明らかにしようとする方法。
 長所 … かなり広範な発達段階にわたっても短期間に全資料を得ることができる。研究の時間・経費・労力などの面で経済的。統計的処理が可能で、事例研究などに比べて,データとしての説得力が大きい。
 短所 … 各段階ごとに独立の被験者であるので、年齢差に年代差が行絡し、その動的内容や質的変化や発達的相関などを純粋に抽出できない。

縦断的研究
 同一個人,または集団が時間の経過と共にどのような発達的変化を遂げていくかを追跡していく方法。研究対象が少数の限られた被験者で、各個体ごとの資料に基づいた事例研究(case study)から数量的処理に耐えうるほどのかなりの数の被験者について追跡的データを求める大規模なものまでありうる。
 長所 … 発達という連続的・動的な過程をそのまま内容的に捉え、その過程を質的に分析できる。
 短所 … 時間や労力などの負担が大きく実施が困難。研究が長期にわたるため、被験者は、質・量ともに限界がある。

コホート
人口統計学の分野で発展してきた概念。同じ時期に人生における重大な出来事を体験した人々の集合。
 コホート分析 … いくつかの異なった出生コホートを何年間か繰り返しテストするもの。各出生コホートは、研究終了時までには前年齢をカバーし、各コホートの年齢が重複するように選ばれる。各年齢レベルに複数のコホートを含めることにより、縦断的方法の主な短所―年齢とコホートの混合―を避けられる。同様に縦断的方法の一般化可能性に関する短所も避けられる。各コホートの年齢範囲を重複させ並べることによって時間も短縮。しかし、加齢による効果に,コホートの違い及び測定時期の違いによる効果が交絡してしまう。

汚言症

汚い言葉、性的な言葉を絶えず口にする傾向。 4〜5歳では正常な発達においてもみられる。

言語新作
全く個人的な言葉を作り上げること。分裂病にみられる場合は サンタグム(連辞)の結合力の衰退のあらわれ、と説明される。

オセロ症候群 - Othello Syndrome -

シェークスピアの戯曲の主人公名からとった、パートナーの不貞についての妄想。

嫉妬妄想
嫉妬は三者関係の中で愛情の対象を失う不安に基づく正常の心理だが、 事実に反することを確信する場合はやはり妄想の域に入る。

オルゴン・エネルギー - Orgone Energy -

 S. Freud のリビドーという真理的エネルギーに示唆を得て、フロイトの弟子 W. Reich が オルゴン・エネルギーを想定した。オルゴン・エネルギーは概念ではなく、箱に収納できる物理的客観的実体である。これは性交時に発現する生命体の基本的生命力であると考えた。患者に内在するこのエネルギーを性格分析およびボディ・ワークで開放しようとしたのである。
音声障害 - Voice disorder -

 喉頭にある声帯は発声しようとすると緊張し、左右が合わさって声門を閉鎖する。声門が閉じると肺からの呼気圧が上昇し、声帯を押し広げようとし、弾性のある声帯が振動する。声の異常には、嗄声等の質の変化、変声障害などの高さの以上、失声等の強さの以上があり、器質的原因や機能的要因によって生じる。声がかれる嗄声は、急性喉頭炎(風邪による)、慢性喉頭炎、声帯の結節やポリープ、喉頭癌などによって生じる。小学校低中学年の児童に見られる「学童嗄声」は叫んだり無理な発声によるもので、声帯に小隆起、結節、浮腫を認めることが多い。声の高さの障害は、男児の変声期以後なお裏声のような高さにあるとか、女児の男声科症状がその代表的なもので、成長ホルモンが関係している。失声は声帯の外傷、麻痺、それに心因的な原因によって生じる。心因性失声症は、精神的ショックなどで突然声が出なくなる状態であるが、発声時に声帯が閉鎖しない、閉鎖しても声帯の緊張が強すぎて硬く呼気流が通過しないことによって生じる。