はじめに
ギリシア・ローマ神話は3000年以上も前から世界に語り継がれていて、私達も日常生活の中で、自然に使っている言葉なども数多くあります。
たとえば ' ナルシスト ' は、自己陶酔して池に映る自分の姿をずっと見つめていたため水仙にされてしまった 'ナルキッソス ' が語源ですし、木星を示す ' ジュピター ' はローマ神話の最高神 ' ユピテル ' に由来します。またブランド ' エルメス ' も、ゼウスの俊足の伝令で、旅人の主護神でもある神 ' ヘルメス ' にその名をとっています。
オリュンパスの陽気な神々は、夜な夜な黄金のテーブルを囲んで饗宴を開き、飲めや歌えやの乱痴気騒ぎを繰り広げます。
気に入った異性がいれば、力ずくでも我がものにしようとするし、そのためには、世界の果まで追いかけることさえもいとわないのです。
女神達は神秘の泉で沐浴して永遠の若さと美しさを競い合い、また自分を侮辱した人間をこらしめるために、はるばる冒険に出かける神もいます。
人間的な … あまりに人間的な神々の物語たちです。
*ギリシア神話は、古くから司祭詩人によって、口から口へ伝誦されていきました。その後、竪琴を弾きながら、自作の詩や名作を歌うことを職業とした「ラプソジスト」(Rhapsodists)と呼ばれる弾唱詩人たちにより伝説は語り継がれていきました。そういった詩人の中でも、ホメロスとヘシオドスの詩篇は、ギリシア神話の聖典とも呼ばれています。アリストパネスの物語も有名です。そんなふうにさまざまな人たちに口づてで伝えられてきた神話なので、地域や書物によって、神々のエピソードや人柄の矛盾が多々あるようです…。
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*ホメロス
紀元前1000年ごろの詩人。オケアノス(オケアノスは、世界の周りをぐるっと取り囲む大きな川で、全ての生命はこのオケアノスから生まれた)を歌った。小アジアの植民地に生まれ、後に盲目となり、弾唱詩人となって市を転々とし、貧しい一生を送ったとされています。ホメロスが死に、やがて彼の名がギリシアの詩聖と褒め称えられるようになると、各地にホメロスの生地だという市が現れました。スシルナ、ロードス、コロフォン、サラミス、キオス、アルゴス、アテネの諸市がホメロスの生地であるという名誉を争いました。しかし実際のところ、本当はどこなのかはわかっていません。これを見た詩人バイロンは「七つの富んだ市が、死せるホメロスを争う、生けるホメロスは、パンを乞うて、それらの市をうろついていたのに。」と詠嘆しました。
*ヘシオドス
ヘシオドスはボイオチヤ生まれの詩人で、少年時代牧童をしていましたが、詩神ムウザ(Mousai)の示現のより、詩人になったと伝えられています。年代的にはホメロスと同時代、もしくはそれより少し後とされています。
*アリストパネス
前5世紀ごろの喜劇作家。ニックス(ニックスは暗黒(夜)を意味する大きな鳥で、この鳥が生んだ銀の卵のなかから生まれた愛の神エロスによって、天地が創造された)を歌った。
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