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ババラギ 』papalagi
エーリッヒ・ショイルマン編 / 岡崎 照男:訳

はじめて文化を見た南海の酋長ツイアビの演説集

「ヨーロッパの人は、誰もが投げられた石みたく人生を走る。目を伏せ.大きく手を振り,先頭に立とうとする。もし他人が止めようもんなら立腹して怒鳴る。早く行く人ほど立派、つまり白の世界でひとりの人間の重さを測るのは、気高さや勇気や心の輝きでもなくて、一日にどのくらいたくさんのお金を作れるか、そのお金を地震があってもびくともしない頑丈な鉄の箱の中にどのくらいたくさんしまっているか,なんだ。他人に稼いでもらって遊び呆けてる人も沢山いる。彼らはその金を厳重に守られたひとつの場所ヘ日々運ぶ。するとある日、魔法みたいに、お金そのものが働いてくれるようになって、幹から木の葉が生えるように増えてゆき、そうしたらもう眠ってたってどんどん金持になる。みんなが同じくらいお金を持ち、一緒に日なたぼっこをする、なんてありえないという信念がある。お金のために、あざむき、いつわり、いつも不正直で、人を信じない、心は固く、血は冷たい。残酷になるのも正しいことと考え、人まで殺す。ひどく悪い奴だということも大いにあり得るから、お金をたくさん持っている人が心の善い人かどうかなんてわからない。だからお金持になったら自分に捧げられる世間の尊敬が、自分自身にか、彼のお金にか、わからない、それゆえ私には、そうでない人々がなぜそんなに自分を恥じ、お金持をうらやむのか、その理由がわからない。私たちはみな貧しい。だがしかし!金持のアリイ(紳士)の目はかすみ、しぼみ、疲れているが、おまえたちの目は大いなる光りのように輝いている。喜びに、力に、いのちに、そして健康にあふれ、輝いている。おまえたちの目は、パパラギの国では子どもだけしか持っていない。 言葉も話せない、それゆえお金のことは、まだ何も知らない子どもだけしか。」

西サモアウボルト島酋長ツイアビ


*パパラギとは白人のことを指す




















2005